http://www.nikkei.com/article/DGXLASHD13H50_U7A610C1000000/

2017/6/14 15:00

 ダイハツ工業の社長に就任した奥平総一郎氏(61)は日本経済新聞などの取材に応じ、トヨタ自動車と進める新興国での小型車開発について「タイで手がけることを検討したい」と話した。同社はインドネシアやマレーシアで小型車を生産しているが、タイは初めてとなる。車種や投入時期などは明らかにしなかったが、トヨタの生産や開発拠点を活用する。奥平氏は6月8日付でトヨタの専務役員からダイハツ社長に就任した。一問一答は以下の通り。

 ――トヨタと進める新興国向けの小型車開発で「新興国小型車カンパニー」を設立しました。具体的にどのような地域でどういった車の展開を考えていますか。

奥平総一郎 ダイハツ工業社長
画像の拡大
奥平総一郎 ダイハツ工業社長
 「おもに東南アジア諸国連合(ASEAN)地域を中心に考える。具体的な車種の投入計画は公表できないが、当社がインドネシアやマレーシアで手がけてきた低コストで質を重視した車づくりが通じる地域が中心となる。そのため、タイは中核地域の1つだ。インドネシアなど既存の進出地域に次いで、優先的に考えたい」

 ――具体的に開発はどのように進めていきますか。

 「当社はタイに生産や開発拠点を持たないため、既に現地に進出するトヨタの拠点を活用することになる。どのような部品をどういうところから調達するかも含めて、両社で議論している段階だ。使用する車のブランドも国や地域によって条件が異なるので、両社で最もブランド価値が高められる方法を選んで検討していく」

 ――2025年度にダイハツが開発する車の世界生産を現在の7割増の250万台に引き上げる計画です。今後の生産能力拡大についてはどう考えていますか。

 「250万台はダイハツが生産し、トヨタが販売する車を含む。当社が持つ日本やインドネシア、マレーシアの生産拠点をフル活用するだけでなく、それ以外でも当社が車づくりのノウハウを活用できる地域には手を広げていく。当然、生産台数を増やす部分では新たな投資が必要となる。新興国小型車カンパニーをつくったのは東南アジアなどでニーズの高い、小さいサイズの車の開発に集中するためだ。軽の技術をベースにトヨタグループにどう貢献し、価値を提供できるかが課題となる」

 ――トヨタで中国やアジア向けの車開発を手がけていました。トヨタが小型車開発で課題としてきた部分に、ダイハツの強みをどう生かせられると考えていますか。

 「新興国向けの車は価格を下げても、商品がその地域のニーズに合致し、メーカーもそのコスト競争力についてこれないと良い車づくりができない。調達戦略もすべてその目線が必要だ。トヨタの原点は小型車技術だが、企業規模が大きくなるなかで展開する車種が広がり、そうした目線がずれてしまった部分もあると感じる。一方で、ダイハツは過去何年もかけて選択と集中を行い、軽を中心に小さな車の市場で競争力を磨いてきた。そうした仕事のやり方にトヨタが期待している部分は大きい」

 ――新興国の中で、トヨタと提携するスズキが競争力を持つインド市場についてはどう考えていますか。

 「インドは大事な市場で、今後の成長の期待も大きい。ただスズキが強いこともあり簡単には入れない。難しい市場であることは間違いない。トヨタとスズキの関係について当社がコメントする立場にはないが、当面はトヨタと一緒にインドについても十分な検討をしていく」

(聞き手は川上梓)