マイナンバーをめぐって政府がLINEと連携するのは、今秋、本格運用を始める個人向けサイト「マイナポータル」の利用を促し、マイナンバーカードの普及にもつなげる狙いがある。一方でLINEに対しては情報流出などの面で懸念する声もある。今回の連携では、利用者がLINEに個人情報を残すことがない仕組みにしているが、安全性の周知徹底が重要になりそうだ。

 LINEとの連携は、利用者がマイナンバー制度をPRするウサギのキャラクター「マイナちゃん」と対話するかたちで進む。利用者が住む市区町村を入力すると、「児童手当の申請」や「乳幼児検診の通知」など、その地方自治体で対応しているサービスを教えてくれる。利用者が日頃から親しんでいるLINEでのやり取りを通して、気軽な利用につなげる仕組みだ。

 カードの普及率の低さについて、マイナンバー制度を所管する高市早苗総務相は3月の会見で「まだまだ利便性について、何に使えるのかといった周知が十分ではないと思っている」と問題意識を示していた。マイナポータルの利用が進むかどうかは、制度の成否に大きく影響する。政府は子育て関連サービスなどの便利さを周知したい考え。

一方でLINEは、「LINEを使って何でもできる」(出沢剛社長)という“スマートポータル”の実現を目指しており、両者の狙いが一致した格好だ。

 ただ、情報セキュリティーをめぐっては昨年、タレントらの不倫騒動で週刊誌にLINEでのやり取りが掲載。また、iPhone(アイフォーン)版では、第三者にアカウントを乗っ取られてやり取りを盗み見られる可能性がある不具合があり、LINEはこれを修正した。同社は6月9日を「サイバー防災の日」と定め、乗っ取りの被害を疑似体験できる動画を公開するなど、注意喚起を進めている。

 政府関係者は「セキュリティーの面から、マイナンバーでのもう一段の連携は難しいのではないか」と指摘する。

 LINEは東京都渋谷区や福岡市と連携しているが、まだ、行政側からの情報発信が主で、アプリでの行政手続きには至っていない。LINE側からみても、スマートポータルの実現には、サービスの活用事例を増やす地道な取り組みとともに、情報流出懸念の払拭が必要だとみられる。(高橋寛次、大坪玲央)
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