国内最大の展示施設「東京ビッグサイト」(東京都江東区)が2020年東京五輪・パラリンピックで報道陣の取材拠点となるため、20カ月間にわたり利用が制限されることに中小企業の間で反発が起きている。期間中の展示会約500本が中止に追い込まれ、1兆円超の売り上げが消えるとの試算もあるからだ。中小企業は従業員数で日本全体の約7割を占める。関係者からは「五輪特需どころか、五輪倒産が続発しかねない」といった悲観的な声すら出始めている。(松村信仁)

 「2年近くも展示会に出品できないのは死活問題」。5月、ビッグサイトのIT展示会に出展した包装機械メーカー、印南製作所(東京都足立区)の印南英一社長は頭を抱える。

 営業や販売促進に人手をかけられない中小企業にとって、展示会は絶好のアピールの場。多くの来場者と名刺交換し、商談を持ちかける。同社も1回の出展で総額1億円前後の商談を成立させることもあるだけに、ダメージはあまりにも大きい。

 平成27年度にビッグサイトで開催された展示会は302件で、約1600万人が来場した。年間延べ約9万社が出展するが、その9割以上が中小企業だ。しかし、施設面積の約7割を占める東展示棟は改修工事もあり、五輪期間を挟んで31年4月から32年11月まで使えない。西展示棟も32年5〜9月は利用できない。このため東京都は約1・5キロ離れた場所に仮設展示場を設けることにしているが、警備を理由に同年7〜9月の使用を認めない考えだ。

 展示会の主催団体約300社からなる日本展示会協会の試算によると、32年3〜9月に限っても、3万8千社が出展できなくなり、約1兆2千億円の売り上げが消えるという。

 協会には見直しを求める14万件超の署名が寄せられた。協会の石積忠夫会長は「五輪には反対していないが、取材拠点を別の場所に移し、展示会ができるようにしてほしい」と要望。小池百合子都知事に再検討を働きかける。

2017.6.3 21:32 産経新聞
http://www.sankei.com/smp/economy/news/170603/ecn1706030016-s1.html