『コメダ珈琲店』(名古屋市)の勢いが止まらない。754店(24日現在)、44都道府県で展開。近年、年間70−80開店と加速し、東京オリンピックの2020年度の末に、国内外1000店を目標としている。

 18年、創業50周年を迎える。創業者の加藤太郎氏が名古屋で開業した個人喫茶店が始まり。平均滞在時間1時間とセルフ型の3倍という効率の悪い昔ながらの喫茶店テイストのまま、国内3強を占め、急成長中だ。

 躍進は13年、臼井興胤(うすい・おきたね)氏が代表取締役社長に就任した時から始まる。臼井氏は、日本マクドナルドCOO、セガ代表取締役社長などを歴任したプロ経営者だ。入社直後、創業者に会い「コメダイズム」を学び、今でも週に一度、店に立ち、自らコーヒーをいれる。

 「コメダイズム」とは、「コーヒーを大切にする心を通して、お客さまに“くつろぐ一番いいところ”を提供する」理念だと、執行役員マーケティング本部長、中山拓美氏はいう。

 1977年、加藤氏は「一戸建ての店舗に駐車場完備」、「年中無休で長時間営業」「コーヒーの味は均一」の3つの方針を定めた。その後、年間1万4301円(総務省)と日本一喫茶店にカネを使う町・名古屋の市民に鍛えられてログハウス風の建物や名古屋流のボリュームあるモーニングサービス、多くの新聞や雑誌類を置く、などの「コメダスタイル」を構築した。

その後、時代は、一杯のコーヒーを短時間に飲むセルフ型チェーンに替わり、2000年代には、オシャレな空間を提供する米シアトル系のチェーン店へと変化した。

 しかし、コメダの価値は、「マニュアルで測れるおもてなしではない」「いつものお客さまに、ゆったりとくつろいでいただくこと」(中山氏)。かつての喫茶店にあった居心地の良さ。その実現のため、同社では、店舗オープン前に3カ月と他社の2倍近い研修を行い、社員に「コメダイズム」をたたき込む。

 一方で、「変わらないことがコメダイズムではない」(中山氏)とも。ふんわり焼いたデニッシュパンの上にソフトクリームをのせた、看板商品「シロノワール」に対し、16年2月、チョコをのせた「クロノワール」を発売。40年のロングセラーの派生商品に、ファンの間でも賛否の議論が起こった。

 実は、創業者は常にいろいろなメニューを試し、客の支持があれば採用した。変わらないのは、メニューややり方ではなく、「お客さまの喜ぶ顔が見たいという思い」。それが「コメダの強さ」と中山氏は言う。 (村上信夫)
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20170530/ecn1705301700011-n1.htm