北陸の地銀で人工知能(AI)を導入する動きが加速している。福井銀行は新卒学生の採用に活用し、東京など大都市からも学生を呼び込む。北陸銀行は個人客の膨大な取引履歴データの分析で活用を始めた。経営資源の限られる北陸の地銀は、人口減や異業種の金融進出で経営環境が変わる中、金融とIT(情報技術)が融合した「フィンテック」への対応を急ぐ。

 福井銀は売り手市場で競争が激化する新卒学生の採用にAIを活用する。採用支援会社のアイプラグ(大阪市)が運営する採用サービス「オファーボックス」を18年卒の学生の採用活動から導入した。アイプラグは全国の地銀向けにサービスの無料提供を始めており、福井銀が全国で最初の導入行となる。

 同サービスは学生がサイトに書き込んだプロフィルや自己PRを見て企業が興味のある学生に連絡する仕組み。搭載するAIがプロフィルから採用試験を受けてくれそうな学生の順にデータを並び替えるなど効果的な採用活動が期待できる。

 福井銀は大都市など県外在住の学生や地元就職に関心の低い学生、県内出身者で銀行を希望していない学生へのアプローチを強化する。同サービスは18年卒については現時点で5万5千人以上の学生が登録、2500社以上が導入している。

 AIを個人客向けの営業に活用するのは北陸銀だ。ビッグデータ分析を手掛けるベンチャーのゼネリックソリューション(東京・渋谷)と業務提携し、AIを活用した顧客データの分析を始めた。同社が開発したAIを搭載した解析ソフトを導入し、個人客の出入金や残高、金融商品の購入など膨大な取引履歴を分析。最適なタイミングやニーズを捉えた金融サービスの提供につなげる。

 最長で11月まで実証実験をし、データの活用法を探る。北陸銀に先行して同社とビッグデータを活用したサービス開発を進めてきた千葉銀行は4月、データから金融商品を購入する確率が高い潜在顧客を予測して絞り込むシステムを導入。資産運用提案の営業に活用している。北陸銀は「生かし切れなかったデータを活用できる」とみる。

 北国銀行はAIを使って取引先の財務分析・支援に取り組む。ベンチャー企業のfreee(フリー、東京・品川)と、取引先の財務情報を自動的に分析するシステムを共同開発。4月に導入した。資金繰りや経理状況などに大きな変化が見えた場合、リアルタイムで銀行員に通知し経営支援を促す。

 多数の融資先を支援する銀行の担当者にとって、各社の膨大なデータを把握して分析するのは負担が大きく、全ての顧客に十分な支援を提供するのは難しかった。AIでより効果的な支援につなげる。

 AIを使えば行員の作業負担を減らせ、業務の効率化にもつながる。日銀決済機構局の河合祐子審議役は「金融は実務の膨大なデータを蓄積している。AIの分析能力は大きな武器になり、活用範囲は確実に広がっていく」と話す。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO16758590T20C17A5LB0000/