サイトウ イサム[著] / 加藤 秀行[著] 2017/05/20 18:00
 マイナス金利は企業に一定の影響を与えたものの、その効果は全体には波及しておらず、個人投資家からも歓迎されていないようだ。

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 東京商工リサーチは4月10日から19日にかけて、全国の企業を対象に「マイナス金利に関するアンケート調査」を実施し、その結果を5月9日に発表した。
有効回答社数は5,196社。

 日銀のマイナス金利政策が自社の経営に及ぼす影響を聞いたところ、65.6%の企業が「どちらとも言えない」と回答し、
「プラス」が27.9%で「マイナス」が6.3%だった。マイナス金利政策が自社に「プラス」と回答した企業にその理由を複数回答で聞くと、
「資金調達がしやすくなった」(47.2%)、「取引のない金融機関からのアプローチが増え、資金調達ルートが多様化した」(25.1%)などの回答が多かった。
自社に「マイナス」と回答した企業に同様に聞くと、「預金金利の低下で利子収入が減った」(53.0%)、「債券利回りの低下で資産運用益が減った」(23.1%)、
「金融機関の営業攻勢により不要資金の調達が増えた」(10.8%)などが多かった。


 続けて、マイナス金利の拡大を望むか聞いたところ、「拡大を望む」と回答した企業は9.9%にとどまり、「拡大を望まない」が38.1%、
「どちらとも言えない」が45.4%となった。回答を企業の規模別にみると、
「拡大を望む」と回答したのは資本金1億円以上の企業が4.4%で資本金1億円未満の企業が11.0%、
「拡大を望まない」と回答したのは資本金1億円以上の企業が38.6%で資本金1億円未満の企業が38.0%だった。

 一方、マネックス証券株式会社は同社に口座を保有する個人投資家961名を対象に、相場環境に対する意識調査「MONEX 個人投資家サーベイ 2017年3月調査」を実施し、
その中で金融政策について聞いた。調査期間は3月3日から6日。

 日銀がどのような金融政策をとったら投資に積極的になれるか聞いたところ、「マイナス金利政策の停止(金利引き上げ)」が35.9%で最も多く、
「ETF・JREIT買入の増額」(27.6%)、「国債買い入れの増額・対象の拡大」(17.3%)、「国債の直接引き受け(ヘリコプターマネー)」(16.9%)などが続いた。

 また、日銀のマイナス金利政策の導入はインフレ期待の拡大に貢献しているかを聞くと、「貢献している」は17.2%にとどまり、
「貢献していない」の47.2%を大きく下回った。「分からない・どちらともいえない」は35.6%だった。

 日銀のマイナス金利政策は企業に借入金利引き下げのメリットをもたらしたが、さらなる拡大には消極的な企業が多かった。
また、個人投資家も金融緩和には期待を寄せているものの、マイナス金利政策については停止を望む個人投資家が多く、その効果は限定的にとどまっているようだ。

http://moneyzine.jp/article/detail/214775