【ワシントン=河浪武史】米労働省が5日発表した4月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数が前月比21万1千人増えた。増加幅は市場予測(18.5万人程度)を上回り、前月の7万9千人から急回復した。失業率も4.4%と約10年ぶりの水準に改善。6月にも見込まれる米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ判断に追い風となる。

 雇用者の増加幅は好調の目安とされる20万人を2カ月ぶりに回復した。失業率は前月から0.1ポイント改善し、2007年5月と並ぶ9年11カ月ぶりの水準だ。FRBは完全雇用とみる失業率の水準を4.7%とみており、労働市場には逼迫感がにじみ始めている。

 FRBは3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送ったものの、6月中旬の次回会合で再び金融引き締めに踏み切る可能性がある。先物市場は既に7割の確率で次回会合での利上げを織り込んでおり、FRBは6月初旬に公表する5月の雇用統計などを見極めて最終判断する。

 課題は賃金上昇率の鈍さだ。平均時給は26.19ドルと前年同月比2.5%増にとどまった。伸び率は前月からやや鈍化し、08年の金融危機前の水準に届かない。雇用の逼迫が賃上げや物価上昇にどこまで結びつくかが焦点となる。

 就業者数を業種別にみると、レジャー・接客業が5万5千人増と大きく伸び、ヘルスケアなども雇用を積み増した。トランプ大統領が雇用維持にこだわる製造業も6千人増と、緩やかに持ち直している。インフラ投資などの政策期待がにじむ建設業も5千人増えた。

2017/5/5 21:36
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC05H1G_V00C17A5000000/