日本に甘く、他国に厳しい規制

減少したクロマグロを回復させるためにWCPFCという国際組織で、国別の漁獲枠を設定しました。日本が主導して、2002−2004年の漁獲量をベースに未成魚は当時の半減、成魚は当時の漁獲量を超えないことで合意をしました。
日本の漁獲量が圧倒的に多かった10年以上前の漁獲量を基準にしているので、最近(2010−2012年)の漁獲実績と比較すると、韓国は7割削減、米国、メキシコはほぼ半減に対して、日本はたったの6%の削減でした。日本のごり押しで、自国に甘く他国に厳しい漁獲枠設定をしたのです。
クロマグロの国別漁獲枠(トン)

また、2002-2004年から比べると、現在のクロマグロの資源量は半分以下に減っているので、未成魚のみを半減する現在の漁獲枠では、漁獲圧の削減にはなりません。現行の規制では甘すぎるという国際的な非難を浴びています。

参考:マグロ減らし国の名誉傷つける水産庁「二枚舌外交」

日本に対する風当たりが強まる中で、漁獲枠を超過してしまいました。国際的な非難を浴びるのは必至の情勢です。

超過を最小限に抑えるためのやる気と予算の欠如

超過した漁獲を止める法的根拠はないからといって、放置しておいて良いわけはありません。国全体で漁獲枠を超過することが確実になった段階で、未消化の枠を回収して、超過を少しでも減らすように努力をすべきです。

水産庁は「あなた方はこれだけ漁獲して良いですよ」といって、漁業者に魚を獲る権利を与えました。それを回収するのだから、「タダで」というわけにはいきません。それなりの補償が必要になります。300トンの未消化の枠を、国が補償して回収する場合、いくらかかるでしょうか。クロマグロ幼魚の浜値(漁業者の売値)は1kg500が相場です。
燃油などの経費を除けば、利益はほとんど残りません。それどころか赤字の経営体がかなりの割合を占めています。ということで、この浜値の半分でも現金で入ってくれば、漁業者としてはかなり得になります。満額補償したとしても1億5千万円。
半額なら7500万円です。この程度の金額で、「漁獲枠も守れない国」という汚名を免れることができます。ルールを守れない国は国際会議でも発言力が低下していきますので、長い目で見れば、国益に適う出費です。

去年の12月には、日本海西部や太平洋南部ではブロックの漁獲枠を超過していました。その時点で、政治家や財務省に掛け合って補償財源を確保しつつ、漁獲枠が余っている漁業者を説得していれば、国全体の漁獲量を超過することはなかったでしょう。

※一部引用
https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20170503-00070557/