日本原燃が青森県六ケ所村に建設を進めている使用済み核燃料再処理工場は、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査が実質的に終了したことで大きな節目を迎えた。だが、今後も必要な手続きが数多く残されており、原燃が目標とする平成30年度上期の完成は厳しい状況。とはいえ、スケジュールに固執する余り、安全対策がおろそかにならないよう緊張感を持って着実な取り組みが求められる。(福田徳行)

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 「審査の初期段階における論点整理や重大事故に関する検討に時間を要したが、一通りの説明を終えることができたことは非常に大きな前進。完成に向けてあらゆる工夫と努力を傾注していく」。先月31日の定例会見で工藤健二社長は、30年度上期の完成目標を堅持する姿勢を強調した。

 ◆実質「審査終了」も…

 26年1月の新規制基準への適合申請から約3年3カ月。これまでの過程を踏まえれば原燃にとっては、ようやくたどり着いた大きな一歩と言えるが、完成に向けた高揚感は感じられない。

 理由は超えなければならないハードルがいくつかあるためだ。その一つが審査での指摘事項を反映させる「1万数千ページ」(工藤社長)にも及ぶ膨大な量の補正申請書への対応だ。社員数百人が作成に当たり、近く規制委に提出する準備を進めている。

 規制委が問題なしと判断すれば、事実上の合格証に当たる審査書案の作成に入る。だが、これまで審査に合格した原発はパブリックコメント(意見公募)を実施していることから、合格に当たる審査書の決定は早ければ今夏になるものとみられる。このため、「しっかりとした補正申請書を作らなければならない」(原燃)のは当然だ。

 さらに、合格してもその後は緊急時対策所や貯水槽の新設などの安全対策工事やそれに関する工事の設計や方法の認可(設工認)が必要だ。ただ、同時並行的に掘削工事など先行して始められる工事は実施している。工事を終えた後も使用前検査を受けなければならず、こうした手続きを総合的に勘案すれば、スケジュールのタイトさだけが浮き彫りになっていることは否めない。

 同工場は核燃料サイクル事業の要として5年に着工。当初、9年に完成予定だったが、設計変更やいくつかのトラブルで延期が繰り返されてきた。さらに、東日本大震災もあって事業は停滞。しかし、政府が言う「世界一厳しい審査基準」の適合審査を実質終えた意味は大きい。ようやく光明が差してきただけに、最終盤に差し掛かる今後の審査には慎重に真摯(しんし)に取り組む必要がある。

 ◆信頼と安全の確保

 同工場の年間最大処理能力は800トンで、実に100万キロワット級の原発約40基分の使用済み核燃料の処理能力に相当する。エネルギー事情に乏しいわが国にとって、同工場の操業は産業、経済の発展に多大な影響をもたらす。

 一方で、施設に対する県民の信頼と安全確保は論をまたない。昨年12月に規制委から指摘された放射性廃棄物の不適切保管をめぐる保安規定違反問題を踏まえ、工藤社長は4日の品質保証大会で原燃、協力会社の社員約2100人を前に品質マネジメントシステムの重要性を強調した。

 事業と共存共栄してきた同村にとっても同工場の完成は悲願だ。「再処理工場の着工から24年。国には迅速な審査をお願いしたい」。戸田衛村長は2月に三村申吾知事に協力を要請した際、力を込めた。政府が核燃料サイクル政策を堅持する姿勢を示す中、原燃は安全性の確立とコンプライアンス(法令順守)を徹底し、使命感を持って臨まなければならない。


2017.4.23 07:08
http://www.sankei.com/region/news/170423/rgn1704230021-n1.html