売り上げ減に悩む百貨店業界の救世主として、アニメとマンガが注目を集めている。
大阪市内の百貨店が開催した関連イベントはいずれも盛況で、グッズの販売が目標の2倍となったケースもある。
客層もコアな男性ファンから若い女性、家族連れと幅広い。
百貨店の催事といえば美術展が定番だったが、主役の座を奪う勢いだ。(藤谷茂樹)

日本一の高層ビル、あべのハルカスに入る近鉄百貨店本店(大阪市阿倍野区)は、3月中旬から下旬にかけて、2つのイベントを同時開催した。

マンガを原作としアニメ、実写版の映画が制作された「3月のライオン」
おそ松くん」をリメークしたアニメ「おそ松さん」それぞれのグッズ販売。いずれもにぎわいをみせた。

展示会も開催された「3月のライオン」のファンという長崎市の会社員、早崎美紀さん(26)は「映画で使われた小道具の再現度が高く
映画への期待が高まりました」と笑顔で話した。
おそ松さんの会場を訪れた三重県四日市市の雑貨店員の女性(21)は「仕事の休みを取ってデートに来ました」。

百貨店が集客に苦戦している若い女性をイベントが引きつけたのだ。しかも同店の商圏である関西以外からも。

こうしたイベントは大阪市内の百貨店でこの春、めじろ押しだ。

日本動画協会の「アニメ産業リポート2016」によると、関連グッズの販売なども含めたアニメ産業市場規模は
昨年、1兆8255億円。3年連続で最高額を更新しており、2兆円市場に迫る。

この勢いは百貨店での物販に顕著に現れている。
例えば、今年1月に大丸梅田店(北区)で開催されたマンガ「黒子のバスケ」の展示会では、
初日に約1800人が列をなし、グッズの売り上げは目標の約1・7倍を記録した。

近鉄百貨店本店で3月上旬に開催された「ハイキュー」のアニメ版の原画展でも、女性を中心に1万2千人が訪れ
グッズ購買率は100%を記録。売り上げも目標の2倍、4千万円に及んだ。

各百貨店は「マンガ、アニメをきっかけに、店内の買い回りに目を向けてほしい」と期待をかけている。
平成28年の全国百貨店年間売上高は前年比2・9%減の5兆9780億円。
36年ぶりに6兆円を割り込んだ。
訪日外国人による爆買いを除けば、低調で縮小に歯止めがかかっていないだけに危機感は強い。

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1704/11/news068_2.html