世界初のライザー式科学掘削船「ちきゅう」で地球内部の「マントル」まで海底を掘り進めるべく、
2017年9月に事前調査が行われることになりました。
アポロ11号が持ち帰った月の岩石に匹敵する価値を持つと言われる地球内部のマントルの岩石を人類が初めて手にすることが期待されています。

地殻と核(コア)の間にある地球内部の層「マントル」は、地球の体積の約8割を占め、硬度や水分量から地球誕生の過程を知る絶好の素材ですが、
地球内部の奥深くにあるため、いまだに手にした人はいません。
マントルに到達するには地面を深く掘っていく必要がありますが、
地殻の厚さは地上よりも海中の方が薄いため海中を掘るのが技術的なハードルが低く、海底を掘り進むため深海掘削船が用いられます。


比較的地殻が薄い海底とは言え地殻の厚さは最低でも6キロメートルはあり、
これを掘削船に搭載する金属のドリルで掘り進めていくという作業がマントル採掘プロジェクトでは行われます。
マントル到達を目指すプロジェクトはアメリカの「モホール計画」として1950年代後半にスタートしましたが、技術的・金銭的な問題のため頓挫しました。
モホール計画は、日本の海洋科学技術機構(JAMSTEC)が率いる海洋掘削科学研究開発センター(ODS)が主導す
る「21世紀モホール計画」が引き継ぐ形で国際プロジェクトとしてリスタートし、探査船「ちきゅう」によるマントル掘削計画「まんとるプロジェクト」が発足。
ついに、2017年9月にハワイ沖で事前調査に着手する段階に到達したというわけです。

すでに掘り進める海底はハワイ沖、コスタリカ沖、メキシコ沖の太平洋にある3ポイントに候補が絞られているとのこと。
水深4000メートル下の海底で、最もマントル到達の可能性の高い場所が選び出されることになります。

ODSによるとマントル到達までには「深い水域」「硬い岩石」「熱」の3つの大きな壁が立ちはだかるとのこと。
海底下の岩石は非常に硬く、ドリルの刃がすぐに摩耗するため頻繁な交換が必要で、
さらにマントル最上部は200度以上の高温であると予想されるため、この温度に耐えられるドリルの開発が必要となります。
すでに海底を掘り進めるドリルを入れる軽くて耐久性の高いパイプの開発に成功しており、技術的には掘削は可能だと国際プロジェクトチームは考えています。

探査船「ちきゅう」は従来の船舶の3倍以上の掘削能力を誇ることから、人類初のマントルへの到達成功が期待されています。
まずは2017年9月中旬にJAMSTECの深海調査船「かいれい」でハワイ北東の海域で約2週間調査が行われ、
音波を使って地殻の厚さや温度を観測するとのこと。その後、地球深部探査船「ちきゅう」によるマントル到達プロジェクトは、2020年代初めに掘削がスタートする予定です。

http://i.gzn.jp/img/2017/04/10/mantle-project/a03_m.jpg

http://gigazine.net/news/20170410-mantle-project/