Shire plcのR&Dパイプライン評価

◎はじめに

これから夏に向かいます。
今年は新種のアサガオの種を買うことにしました。自宅のフェンス際に種をまいて水やりを続けるつもりです。暑い盛りには、これまで見たこともない群青色の涼しげな花を咲かせるはずです。
夢がふくらみます。
そのタネはとある園芸店で売っています。
通常、種の値段は一袋500円ですが、まったく新しい発明品種ということで10,000円で売っています。その代わり、袋の中には普通の倍、40粒のタネが入っているそうです。

さて、いよいよ支払うところですが、一万円札を握りしめて立ち尽くしています。タネをまいて、1か月世話をして、ようやく咲いた花が普通の水色やピンクだったらがっかりです。そうなったら、販売した園芸店で1万円を返してもらえるでしょうか?

その園芸店は最近できたばかりです。あの1万円のタネがこれまでに群青色のアサガオを咲かせたかどうか、誰も知りません。
有名チェーンの新規出店ならいいのですが、「シャイアー」という名前は業界の人さえ良く知らないのです。
いくら夢があっても1万円を払うのは無謀かも知れません。今回は初めてなので、1、2粒でもいいですから500円で買いたいところです。
シャイアーは過去3年間の決算報告書(10-Kレポート)で40件前後の開発品目を開示し続けています。それが本当に素晴らしいものなら、どうして株価はPER10倍、PBR1.0倍と最低水準に放置されてきたのでしょうか?

◎シャイアーの研究開発パイプライン

開示品目(合計)47品目:2017年承認取得 7品目、申請中 8品目、フェーズ3 15品目、フェーズ2 10品目、フェーズ1 7品目
分野別:免疫疾患 11品目、HAE(家族性血管浮腫)6品目、血液疾患6品目、血友病4品目、精神・神経疾患 6品目、ADHD(注意欠陥・多動性)3品目

・開発段階の開示品目数は32品目でアッヴィの34品目に匹敵する。しかし、血友病(4品目)、家族性血管浮腫(6品目)、注意欠陥・多動性障害(ADHD、3品目)など、ほとんどがLCMプロジェクトで売上増は見込めない
・5年以内に上市の可能性があるフェーズIII以降の開発品は10品目しかなく、売上ポテンシャルの合計はベストケースで2000億円、プロジェクトごとに成功確率を掛け合わせたリスク調整後は1000億円にとどまる
・ADHD治療薬ビバンセ(2017年実績 2300億円)の特許終了(2020年)による落ち込みを埋められない

◎R&Dパイプライン 売上ポテンシャル(表略)

・ライフサイクル・マネジメント(LCM)プロジェクトのポテンシャルは既存製品モデルで反映しており、パイプラインの集計から除外する
・5年後(2022年)のポテンシャルはベストケースで21億ドル、成功確率を掛け合わせたリスク調整後は10億ドル
・既存製品との合計137億ドルは5年間平均年率1.0%の減少となる