■営業所長に権限移譲 エリア分析し、MRを配置

国はこれから本格化する超高齢化と人口減少(=医療需要の減少)を見据えて、地域包括ケアの導入を推進している。
これは病院などの“箱モノ”を増やさず、2次医療圏単位で地域の病院機能の分化・連携や在宅医療を強化し、地域が一体となって高齢者を支える取り組み。
市町村、都道府県、医師会、病院経営者らが参加して地域医療を再構築し、これまでの施設完結型医療から地域完結型医療に転換する。

一方で、製薬企業からみると、地域の実情に応じた機能分化と連携が行われるため患者の治療やケアの流れを把握しづらくなり、患者をしっかり把握・フォローアップできなければ、製品の適正使用の推進や副作用情報の収集と報告義務に支障をきたすとの指摘がある。

同社は今回、GMBUの下におく営業所を2次医療圏を念頭に大幅に増やし、地域医療や医業経営に対する意識がより醸成される「医療経営士」の有資格者を営業所長にすることにした。13支店体制は変わらない。会見に同席した大中営業本部長は、
「(MRが)2次医療圏全体をカバーした方が良いエリア、高機能病院だけを担当させた方がいいエリアなどいろいろある。全国一律にはいかない」と指摘し、「第一線の営業所長がしっかり判断し、(MRを)配置できるよう権限を委譲した」と述べた。

岩アプレジデントも、「MRは施設単位での配置もあれば、そうでない地域もある。このためエリア単位で見られるよう、人材(=医療経営士)をここ(=営業所)の責任者にした」と述べた。
各エリアでの機動力を高め、地域包括ケアに的確に対応するための新体制というわけだが、営業所長の力量が新体制成功のカギを握りそうだ。

■“チームタケダ”で情報活動 KPIで連携を重視

岩アプレジデントは地域包括ケア時代のタケダとしての情報活動のあり方として、「今後、高機能病院、専門病院、一般病院、クリニックと地域の中で機能が分化し、患者さんの診察、診療方針の決定、ケアするところがいろいろ変わる、流れていく」とし、
「この患者の流れに沿った最適な情報を、一番いいタイミングで、しかも各機能に分かれた病院に求められる情報を、ベストな人間がベストな方法で届けられる体制にする。“チームタケダ”で対応する」と語った。

デジタル技術を用いたタケダ独自のマルチチャネル戦略で対応するという。具体的には、MSLやRAC(=3次医療圏単位で地域医療の動向を調査・分析する同社専任担当者)などの非営業部門と、営業部門との間で、
交換して良い情報と交換してはいけない情報のすみ分けを明確にした上で、デジタル技術を用いて様々な情報を非営業部門、営業部門それぞれで一元管理する。
そして、地域や情報ニーズなどを分析して患者の流れに沿った最適情報を、その情報を必要とする顧客に、GMBU、SPBU、JOBU、JVBUの各MRやリモートディテールを用いて提供したり、MSLやRAC、またはリモートで情報活動していくようだ。
社内ではこの情報活動を“シンクロナイズド・マルチチャネル・アプローチ”と呼んでいる。

岩アプレジデントは、「チームで地域全体をカバーしたい」と述べるとともに、地域包括ケア時代のMRなどのKPIとして「連携」を重視していることを明らかにした。

https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/59534/Default.aspx