製薬業界の花形職種に冬到来、大手で希望退職に400人殺到

◎最大手の武田で大勢が出向、転籍
国内も続々人員減

画期的な新薬の開発難易度も、それに掛かる研究開発費用もますます上がっている。製薬業界はヒット製品を簡単に生み出せない苦境に立たされている。
社会保障費が高騰する中、約1年にわたる議論の末に薬価制度の抜本改革の骨子が17年末に決まった。薬価の毎年改定、革新的新薬に対する薬価優遇の大胆な見直し、特許が切れた新薬(長期収載品)の薬価大幅見直しなどがその内容。
要は、画期的な新薬には高い値を付けるが、それ以外はどんどん引き下げるというもの。製薬会社には寒風以外の何物でもない。

その寒風は外資製薬に限って吹くわけでも、今になって吹き始めたわけでもない。
国内製薬大手4社(武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ)の人員数の推移を見ると、12年度に約2万2000人だったものが16年度は約2万人と、およそ1割減少している(下図「最近の主な人員削減」参照)。新規採用の抑制や早期退職募集などの結果だ。

国内最大手の武田薬品は研究開発体制や組織を見直し中で、17年度も多くの人員を子会社や関連会社へ出向、転籍させた。減少幅はさらに広がる見込みだ。

大手4社以外でも上表のように、中堅の田辺三菱製薬で634人、大日本住友製薬で86人の早期退職への応募があった。田辺三菱製薬は「環境変化に打ち勝つ強靭な体質への変革が急務」、
大日本住友製薬は「国内での後発品(ジェネリック)使用促進策による長期収載品売り上げへの影響に加え、戦略品等の売り上げも期待通りには拡大しておらず、国内事業の基盤強化が喫緊の課題」と、厳しい自社の状況を説明していた。

製薬会社の従業員たちは、「MSDの次はわが身か」と戦々恐々としている。特に自社製品の当たり外れで調整人員にされがちなMRへの風当たりは強い。
財務省も昨年10月の財政制度等審議会・財政制度分科会で「営業費用など研究開発費以外の販管費の比率が高い」と指摘。MRの待ち時間や雑務の多さをやり玉に挙げ、産業構造の転換を促している。
「MRに厳しい時代が確実に来ている」と大手製薬会社の現役MR。高収入で人気を博した花形職種が凍えている。

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