X社は、世界約100力国で、医薬品の開発および営業支援などのサービスを提供する企業である。
 その日本法人の成果主義は5段階の相対評価で、その分布率は最下位の1評価と最上位の5評価は全体の5%、「期待の一部が達成できない」2評価は10%、平均的な3評価は55%、「期待以上」の4評価は25%である。
 ここまでは一般的な評価制度と変わりはない。問題なのは最下位の1評価は1回、2評価の場合は2回に達すると、業務命令として達成困難な目標を設定して退職に追い込むPIP(業務改善計画)が導入されていることである。
 同社の従業員数は3600名、その5%の180名程度は毎年1評価となり、PIPの対象者となる。


 30歳代の男性社員の場合は、2評価2回で自宅待機を命じられ、図書館で毎日ビジネス書を1冊読んでレポートを提出させられた。
 そのレポートに会社側は「今後の業務にどう生かすのかがない」など辛辣なコメントで改善指示を連日行った。また、本社で管理者数人による圧迫面談を受けるなかで、その社員は自己都合退職に追い込まれていった。

 このように、成果主義の相対評価の下位ランクの従業貰をリストアップして、業務命令として過大な目標や過小な目標(単純作業等)、さらには圧迫面談と成果主義に基づく賃下げ等で、退職に追い込むのがPIPの特徴である。

 「Yネットお互いさま」に所属する組合員の場合は、次のような処遇にある。
  @評価が低いことを理由に3年以上に及ぶ自宅「勤務」(賃金や、等級はそのまま)、
  A自宅にてパソコンによる社内学術試験に向けての学習、週末(業務時間外)には単位取得の試験、
  B職場に戻るには社内就職活動での合格が必要で、本人の未経験・専門外の仕事が多い、
  C社内就職活動での管理者による事前面接があり、合否判定はその管理者に委ねられるため恣意的な扱いがされている、
  D業績評価は実際の仕事につくことが7割を占めているため、自宅「勤務」ではボーナスは低位となり定昇はない、などである。

 団体交渉では、自宅勤務といっても仕事を与えないというハラスメントの構造におかれていること、会社の責任として適材適所に配置するよう追及を重ね、ようやく職場復帰に向けた会社からの具体案が示され、事前研修がおこなわれているのが現況である。