東海大学健康科学部元教授の田爪正氣氏は、温水洗浄便座の温水タンク内の水に着目し、その衛生状況を調査している。

田爪氏は語る。

「温水洗浄便座が本当に清潔なのか細菌学的に検証するために、神奈川県内の一般家庭・公共施設にある温水タンク付きの温水洗浄便座108ヵ所を対象に、温水タンクの水の細菌を調べました。

すると温水タンク内の水は水道水に比べ、平均して一般家庭においては30倍、公共施設でも10倍の細菌が存在するというデータが明らかになったのです。

これは、温水タンク内では水温が約38度に設定されているため、殺菌用の塩素が蒸発し、機能しなくなることに起因すると考えられています」
田爪氏は便座から水を噴き出している「ノズル」にも注目している。

「我々が調査したうちの4例では、ノズルから侵入してきたとみられる大腸菌がタンク内で繁殖していることが確認されました」(田爪氏)

東海大学医学部付属八王子病院の医師らの研究によると、'15年に同病院内の温水洗浄便座21台のノズルなどを対象に行った調査では、5台のノズル部分から「緑膿菌」が検出された。

緑膿菌と言えば、呼吸器感染症や敗血症などを引き起こす細菌だ。このような細菌が含まれている可能性がある水を、直接、肛門に向けて、毎日噴射しているのである。

「温水洗浄機能を使っている間、肛門に当たった水はしぶきとなり、周囲に飛び散ります。当然、このしぶきには大便中の細菌が混じっている。温水洗浄便座を使うということは、お尻全体に大便を塗りたくっているのと同じ行為なのです」(前出・田爪氏)