「すなっくらんど」ってのは、池袋駅地下で東口に通じる通路途中にあった大規模食事街。
今で言うフードコートって感じだが・・・
フードコートなんて洒落た雰囲気とは反対に、そこはまさに食の雑踏ってな感じの空間。
灯も暗く小さな様々な店と様々な味がひしめき合ったスラム街的な
独特の雰囲気を醸し出していた。
ある意味で危険な雰囲気。客もリーマンや競馬新聞片手のオッサンやばかり。
そこで肩を寄せ合って、立ち喰い状態で飯をかき込むのだ。
そんな「すなっくらんど」もはかなり前に無くなってしまったが・・・

俺は子供時代、親父に連れられて、よくこの「すなっくらんど」に入ったのよ。
親父が日曜に後楽園の場外馬券場に通っていて(自宅が東武東上線沿線なんです)、
俺もよくそれに付いて行ってたの。その途中に親父が「すなっくらんど」に連れて行った訳。
今から思えば、親父も昼食に安く済ませてたよなぁw

ちょっと話が脱線しちまったが、
で、その「すなっくらんど」で、いつの間にか、毎回同じ人を見掛ける事に気付いたのよ。
飯は蕎麦だったりウドンだったりラーメンだったりハンバーガーだったり、
喰うメニューは様々だから、当然喰う場所も違うんだけど、
「すなっくらんど」で喰う度に、俺の視界にそのオッサンが入るの。

そのオッサンとは、巨人の帽子にカーキ色のジャンパーを着た、
丸顔で背の低い人。いつもその格好してるの。
そんなオッサンが、いつも店の片隅で飯を喰ってるんだよね。
俺も子供だったから、その当時は不思議に思わなかったけど、
今から思ったら、毎回そのオッサンと遭遇する確率なんて極めて低い訳で、不思議だよな。

ある時それを親父に話したら、
「よし、今度すなっくらんどに行ったら、確かめてみよう」
と言うので、次に「すなっくらんど」行った時に、
親父といっしょに店内を調べてみた。
その時は、そのオッサンは居なくて、その後も何度も「すなっくらんど」に入ったが、
二度とそのオッサンを見る事は無かった。