ドイツが原発廃止のエネルギー政策をすぐに転換することはなさそうだ。「緑の党」は与党連合に加わっていないが、ドイツ人が環境問題に強いこだわりを持っていることに変わりはない。
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の記憶が、年代が比較的上の有権者の記憶に残っているのだ。それでも、ドイツ国民は原発問題について率直に議論する必要がある。

ドイツのエネルギー政策のパラドックス(逆説)は無視できない。ドイツは二酸化炭素(CO2)の排出量削減に取り組む一方、石炭火力発電所を増設しようとしている。太陽光にはたいして恵まれていないのに、太陽光発電に多くを託してきた。
採算のとれていた原発を閉鎖する一方、フランスの原発から電力を輸入している。

メルケル首相はいまでも欧州で最も有力な政治家であるかもしれない。だが、エネルギー政策の面では、矛盾によって生じた高いコスト負担を国に強いている。メルケル首相は、このやり方を考え直さなければならない。