★アスベストは耐火性や保温性に優れ、加工もしやすく「奇跡の鉱物」と言われた。『我々はその利便性を50年に渡り享受してきた。それと引き換えに背負った負の遺産』。
 アスベストの繊維は、髪の毛の1/5000と極めて細い。しかし、非常に丈夫で、一度吸い込むと、肺の奥深くまで入り込んで一生排出されない。
 『非常に珍しいタイプのがん』だった中皮腫の死亡者数が、90年代から、アスベスト鉱山やアスベストを扱う工場の労働者に増え始めた。
 鉱山や工場の周辺住民にも患者が確認され、大きな社会問題に。
■《クボタ・ショック》
 2005年6月、大手機械メーカーのクボタは、「兵庫県尼崎市の旧神崎工場の周辺に住み、中皮腫で治療中の住民3人に、200万円の見舞金を出す」と公表。
 この《クボタ・ショック》をきっかけに、アスベスト問題が社会問題化。
 その後、クボタは、「工場周辺1キロ圏内の住民にも、労災並みの最高4600万円の救済金を支払う」とした。『工場周辺に住み、中皮腫などアスベストが原因で亡くなった人は、200人以上と考えられている』。
■『アスベストは、家族が衣類を洗濯しただけでも吸い込み、家族にも健康被害が出る』
◆アスベストによる健康被害の潜伏期間
 ▽肺がん…15〜40年 ▽アスベスト特有のがん「中皮腫」(ちゅうひしゅ)…20〜50年
◆『中皮腫は非常に厄介な病気。発症から5年後の生存率…なんと1割未満』
◆中皮腫の死者数[厚労省]
 ▽1980年代前半…約100人
 ▽1995年…500人
 ▽2000年…710人
 ▽2011年…1258人
 ▽1995〜2011年…約1万5000人
 ▽『2040年までに…10万人以上死亡』
 『アスベストが原因と特定しにくい肺がんなどで死亡する人も多くいるので、実際の被害はこれを上回る』。
■なぜ、こんなに死者が増えるのか?
 ▽1957年…日本でアスベスト使用開始
 ▽日本での製造販売禁止…2004年
 ▽中皮腫の潜伏期間…40年ほど
 ▽1960〜1993年頃に、アスベスト使用のピーク・台形の山…約1000万t
 →アスベストを使い始めてから40年という長い潜伏期間を経て、今次々に病気を発祥。これから解体のピーク。アスベストが飛散