トリチウムは三重水素で自然界にも存在し、放射性セシウムやストロンチウムに比べて、人体への影響は少ない。
産業医科大アイソトープ研究センターの馬田敏幸副センター長(放射線生物学)は
「水素の同位体のトリチウムは全身に分散し、ストロンチウムのように骨に蓄積し残ることはない。
飲み込んだとしても、汗や尿で排出され、10日ごとにその半分が体外に出る」と説明する。

国内ではこれまで、トリチウムを海に放出してきた。各原発では、原子炉施設保安規定で「放出管理基準値」を独自に規定。
年間の放出量による一般公衆への影響が年間0・001ミリシーベルト未満に抑えるようにしている。
青森県六ケ所村の核燃料再処理工場では平成20年、再処理試験で出た1300テラベクレル(テラは1兆、管理基準は1万8千テラベクレル)のトリチウムを海に放出。
希釈のため、沖合3キロまで放水口を離すなど工夫をこらした。
これに対し、福島第1原発のトリチウムの総量は、再処理工場の半分以下である500テラベクレルと推計されている。
六ケ所村の管理基準を準用すれば、10日間で放出できる計算だ。