>>13

 米国のジャーナリズムの大半は、トランプ氏がワシントンを去ったのを受け、
権力者の監視人としての歴史的な役割に立ち戻るはずの存在だが、
今や他のメディアの商業的なライフラインを断ち切ることに専念している。
前例を踏まえ、次の大衆迎合的な共和党の大統領が、
人工妊娠中絶賛成派の出版物を「致命的」と宣言するような事態を想像してみるべきだ。

 このトレンドは、1つの党がワシントンのほぼ全てを掌握し、
ほぼ全てのエリート文化機関や多くの大手企業からの声高な支持を得ている中で
出てきた。ソーシャルメディア企業は、コンテンツの判断をめぐる政府の圧力に
ますます影響を受けつつある。進歩派が行政機関を埋める中、
政治家や規制当局者は自分たちを有利にする新たな方法を模索するだろう。

 既に、連邦通信委員会(FCC)に対し、公正の原則を復活させるよう求める声が出ている。
公正の原則は、3つの支配的なテレビ局が存在していた際に施行されていた
発言に関するルールで、1980年代に消滅した。ウェブサイトのアクシオスは、
「米政府はハイテク大手のプラットフォーム上の偽情報の規制をほとんど何も行っていない」
と不満を述べ、リベラル派のファクトチェッカー、ポリティファクトの創設者は、
右派のメディアを追いやるための「規制と新法」を提案している。

 非プラットフォーム化の圧力は、ソーシャルメディア(ツイッターのライバルである
パーラーの崩壊は、最近の最も顕著な例だ)から他のコミュニケーション手段に広がり
つつある。出版社に対しては、トランプ政権で働いていた人からの出版要請を
一切拒否するよう求める声があるほか、AP通信はポッドキャストについて、
ソーシャルメディアによるモデレーションの「抜け穴」だと指摘している。

 「誤情報」は、あたかも政治の世界で不一致やうそがかつて1度も存在しなかった
現象であるかのように、新たに強引な監視を正当化するための万能の言い訳である。
MSNBCテレビのキャスター、ニコル・ウォレス氏は
「ドル紙幣の偽造を防ぐことができるのであれば、フェイクニュースの流布防止も可能
でなければならない。われわれは現在、それが人を殺す可能性のあることを知っている」
と表明した。