PCRで陽性発覚 その翌日、父はコロナで亡くなった 有料会員記事 辻外記子 2020年12月6日 12時00分
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> 85歳だった首都圏に住む男性は、2020年もマラソンをし、
>ゴルフやパソコン教室、語学教室に出かける、活動的な日々を送っていた。
> せきが出始めたのは、3月25日ごろ。
> 「お父さん、大丈夫?」。少し声がかすれていたように聞こえ、
>近くに住む長男が心配すると、「せきくらいするよ」。男性はそう答えていた。

> ところが4月2日、男性は熱を出した。4日の土曜日には38・9度まで上がった。
>1人で近くの診療所へ行くも時間外で診てもらえず、自宅に引き返す途中の男性に長男は遭遇した。
> 「どうしたの?」。男性に高熱があると知った長男は119番に電話し、救急車を呼んだ。
>10分ほどで到着し、一緒に乗り込んだ。救急隊員はあちこちに電話をしたが、
>受け入れ先が見つからない。1時間ほど後、ようやく搬送先が見つかり、病院に運ばれた。
>
> 新型コロナに感染しているかがわかるPCR検査と、季節性インフルエンザの検査の両方を受けた。
>インフルはすぐに陰性とわかった。PCRについては「陽性の場合はわかり次第、電話がいきます。
>陰性ならば郵送で伝えます。自宅で安静に療養していてください」。看護師らからこう言われた。

> 5日、長男が保健所に電話をした。「早くどこかに入院させてほしい」と訴えると、
>「PCR検査の結果次第です」。
> 検査をした病院に「結果を知りたい」と電話をすると、
>「委託業者に渡しているのでわからない。陽性ならば電話でお伝えします」。

> 保健所に翌日も電話をすると、「苦しそうなら医師に往診をお願いできます」と言われた。
>「お願いします」。長男は即答した。
> 7日夕方。保健所の手配により、近くの在宅療養支援診療所から医師(59)が来てくれた。
>生理食塩水500ミリリットルを点滴し、採血し、酸素飽和度を測るなどしてくれた。

> 発熱した2日から数えて8日目、PCR検査をした日からは6日目。
>「コロナじゃなければいい」と思う半面、「コロナじゃなければなんの病気なんだ」。長男の不安は
>大きくなる一方だった。かかってこない電話を見つめ、「八方ふさがりとはこういうことか」と感じていた。