>>527
(続き)
池内了(聞き手・桜井泉)
■忖度促す暗黙メッセージ
・任命拒否の理由を明かさないのは大変巧妙なやり方
 世間様でなんて言われてるか知ってるだろ?しっかりと胸に手を当てて考えてみたらわかるだろ?
 という暗黙のメッセージを送ってる
・上意下達を旨とする忖度の起きやすい官僚の世界とは違って自由闊達であるべき学者の世界までもが
 政府批判をすると不利益を被るからと発言を控える容認ると社会に忖度が広がる懸念がある
・学術会議は専門分野を超えた科学者コミュニティで科学の役割とは何かや科学と国家や社会との関係をどう考えるか
 「総合的、俯瞰的な観点」から議論するものである
・社会が直面する政策課題について諮問を受けたり政策提言や科学の発展の要求を取りまとめたりするのも
 学術会議の大切な役割だが70年ころから各省庁が予算権限を背景に自らの力で作った審議会への諮問が
 広く行われるようになり学術会議への諮問が激減
・そうなった理由は官僚がコントロールしやすいから
・17年に防衛装備庁の資金で軍事研究をする「安全保障技術研究推進制度」への態度表明をめぐり
 学術会議は岐路に立たされた
・元会員として「軍学共同につながる」と反対したが当時の大西会長ら容認派も少なくなく議論を呼んだ
・背景のひとつに国による「選択と集中」の名の下で特定の研究分野に資金を集中させてきたことがある
 これによって基礎的分野の資金が枯渇し若手研究者を中心に喉から手が出るほど資金が欲しいという現実がある
・学術会議は最終的にこの制度について「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」として
 研究機関に慎重な判断を求める声明を発表
 資金不足にも拘わらず問題の重大さから大学からの応募は大きく減っている
・学術会議は過去にもベトナム戦争における飴の行動を非難したり大学管理法にも反対したりして政府・ラ党から圧力を受けてきた
・今回も政府批判を辞めさせる狙いがあるとすれば許されない
 自由な立場で政権を批判するのは学者としての重要な役割だ
・政府・ラ党は「学術会議にこそ問題がある」として組織の在り方を見直す方針
 確かに現会員が後任を推薦する方式や若手育成、性別や分野、地域の多様性確保など課題はあるが
 こうした問題提起をすることで政府の「人事介入」を覆い隠して議論をすり替えるべきではない