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 記者が愚問をすると、まるで相手サーブがフォアハンド側に甘く入ったかのように、
強打せずにいられない。ある記者が全米オープンの会見室で
「あなたは大阪生まれですが、名字がその都市と同じなのはなぜですか?」と尋ねると、
「大阪で生まれた人は全員、名字がオオサカになるのよ」と答えた。
記者が「本当に?」と大声を上げると、「まさか」とあきれかえったようにクスクス笑った。

 恐らく大坂選手にあの人なつこいクスクス笑いと頭を下げる習慣がなければ、
トレードマークの無表情な言動は、寡黙、素っ気ない、厳格、迫力ある、などと
表現されるだろう。これらは1980年代のテニス界のスター、イワン・レンドル選手や、
最近では米プロフットボール(NFL)で活躍するランニングバックの
マーショーン・リンチ選手に使われる言葉だ。

 だが大坂選手のこれまでの成績が全てを物語る。
彼女は男女を通じてアジアのテニス選手で初の世界ランキング1位を獲得。
グランドスラム(四大大会)を制覇した史上初の日本人選手となった。
ハイチ出身の親を持つ選手としても初だ。
父のレオナール・フランソワさんはハイチ生まれで、留学のために来日した際、
大坂選手の母、大坂環(たまき)さんと出会った。2人の間に長女まりさん、
1歳半違いの次女なおみさんが生まれると、両親は環さんの日本名を名字に選んだ。