コロナ対策の新アプローチ:住民まるごと検査せよ
By Deanna Paul
2020 年 5 月 6 日 02:29 JST

 ユリ・エンゲストローム氏は、カリフォルニア州の小さな海辺の町、
ボリナスに設置された4つの白いテントの脇に立っていた。症状の有無にかかわらず、
住民全員を対象に新型コロナウイルスの検査を実施するという、
米国内のほとんどどの地域も達成していない「偉業」をやり遂げるためだ。

 この取り組みでは、地元の住宅保有者やボランティアが検査キットなどを調達し、
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者らと組んで、
4月下旬の4日間に可能な限りの住民を検査した。対象者は、ボリナス町民1600人の
ほぼ全員と数百人の緊急救援隊員を含む1800人超に上った。

 「米国で全員を同じように検査できない理由はない」。
ボリナスの住民で検査を中心になって進めたエンゲストローム氏はこう語る。

 コロナ流行の初期段階では、検査キットの不足から、検査対象は必要不可欠の労働者や
重症の患者、濃厚接触者、感染が深刻な外国からの帰国者などに限られていた。
だが、ここにきて検査キットの供給が増えてきたことに加え、一部の州は経済活動を
再開しており、広範な検査が必要不可欠だと専門家らは指摘している。
地域全体でどの程度の住民がコロナに感染しているかを把握することは、
誰を隔離すべきか、ウイルスはどう拡散したのか、資源をどこに振り向けるべきか
といった問題を理解する上で役立つ。

 UCSFの研究者らは、参加者にPCR検査と抗体検査の2種類の検査を実施した。
PCRは綿棒を入れて鼻や喉の粘膜から検体を採取し、ウイルス感染の有無を調べる。
抗体検査は指から血液を採取することで、過去に感染していたかが分かる。
検査結果は両方とも参加者に通知され、研究に利用される。

 抗体検査は物議を醸しており、質や信頼度に大きなばらつきがある。

 検査キットが増えているとはいえ、まだ限られていることを踏まえると、
健康な人を含め、地域の住民全員を検査することが賢明な判断なのか、
専門家の間では意見が割れている。一部では、向こう数カ月に
国全体のモデルになり得るよう、今からこうした取り組みが必要だとの声もある。

 最終的には、オフィス勤務や学校が再開される前に、
社員や生徒全員が検査されることもあり得る。