コロナ追跡アプリ普及せず、シンガポールの誤算
By By Liza Lin and Chong Koh Ping
2020 年 4 月 23 日 08:05 JST

 【シンガポール】世界各国の政府は新型コロナウイルスの感染対策として
接触追跡アプリの導入を急いでいるが、いち早く取り組んでいるシンガポールでは
市民をアプリに登録させるという大きなハードルが立ちはだかっている。

 シンガポール政府が開発したアプリ「トレーストゥギャザー」は、
新型コロナ感染者の濃厚接触者を当局が追跡しやすくするために設計された。
濃厚接触者が迅速にみつかれば、他の人にウイルスを感染させる前に隔離し、
感染の連鎖を断ち切ることができる。

 だが当局者によると、この技術が効力を発揮するためには、
住民570万人のうち4分の3がスマホにアプリをダウンロードしなければならない。
アプリ導入から1カ月たったが、シンガポールはその目標に程遠い。
政府の報道官によると、先週時点でトレーストゥギャザーのユーザー数は108万人に
とどまっていた。

 つまり、アプリは利用されているものの、当局の接触者追跡作戦に目立った貢献とは
なっていない。ここ数週間で感染者数は増加し、接触者の追跡は一段と厄介になっている。
シンガポールの感染者数は1万0100人を超え、アプリを導入した3月20日から385人増えた。

 富裕なハイテク先進国であるシンガポールの経験は、
スマホアプリで感染を抑制しようとする他国の企業や政府に警鐘を鳴らすものだ。