>>232 >>550
「マスク2枚の真相」炎上と「官僚神話」の崩壊
「一生懸命」という評価軸から脱皮しないと、未知の危機を回避することはできない
井戸まさえ ジャーナリスト、元衆議院議員
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020040600005.html
 以前は政治家がポンコツでも優秀な官僚がいるから日本は安泰と言われていたが、まさに政治家をコントロール
しながら官僚たちが絵を描き、(官僚にとっては国益と信じている)省益を果たすための政策を実現させることが
できてきた
 しかし第二次安倍政権発足から9年あまり。長期化する安倍政権の中でその「官僚神話」が破綻を迎えている。
書類を改竄しても破棄してもお咎めなし。むしろ、そうした政治側の無理筋のオーダーに対して、もっともらしい
理屈をつけて大臣の国会答弁原稿を作ったり、その場しのぎであっても政権寄りの発言を国会の内でも外でも
貫徹することが官僚の出世コースとなった。
 官僚が対峙する「危機管理」はもっぱら安倍政権の舌禍やお友だち優遇に対する自己弁護を用意すること。
いつしかそれにも慣れていく。そこには軸となる「国家観」や探求するべき「国家像」もない。「官僚神話」の破綻である。
 中堅・若手にこそ期待したいところであるが、格差社会が進行する中で、むしろ「学歴エリート」の弊害がさらに
顕在化しているのかもしれない。
 生活上の「絶対経験値」が足らず、市井の実態を知らないものの自らが優秀なのだから、由らしむべし知るしむ
べからずを貫き通す官僚と、自らの利益向上しか興味がない政治家。日本は政官ともに質されなければならない
危険水域に入っていることを、今回の炎上は期せずして示すことになった。

 安倍政権は「改革はまだ道半ば」と言い、「国難突破」と目先を変え、決して結果を問われることを巧妙に避けてきた。
結果を出さず、「頑張っている」と言い続ければ許されるとどこか甘く見ているのである。さらに言えば、他国とは違い、
もはやどんな失政があっても「一生懸命」のフリを続ければ、選挙で政権交代されることもないだろうと高を括って
いるのだ。
 しかしそれを暗に明に支えてきたのは国民である。「おかしい」と思っても声を上げず、違和感を持ちながらも、
同調圧力に抗うことを回避。自分の本音を言うことで輪を乱したりしてしまうのではないかと恐る。自分の気持ちに
対する免罪符が「あの人たちは一生懸命やっているから」だ。
 どこかでこの「一生懸命」という評価軸から脱皮しないと、未知の危機を回避することはできないだろう。コロナの
猛威はまさに日本が抱える病弊を炙り出した。