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日米貿易合意、「トランプ再選」への協力優先で無視された原則
ttps://diamond.jp/articles/-/215942
 さらに問題だと思われるのは、「制裁を背景とした交渉は行わない」とする通商政策上、日本のとってきた基本姿勢
がどこかに吹き飛んでしまっていることだ。

 日本側の担当閣僚である茂木敏充氏などは、「(制裁を)発動しないという確約をとった」と得意満面のようだが、
これは「制裁をやめてもらう代わりに交渉した」と言っているに等しい。
 それを誇らしげに語るとはどういうことなのだろうか。

 こうした日米の交渉担当者の発言は、かつての日米間の通商交渉ではあり得なかった。
 1990年代、様々な分野で一層の市場開放を求めてきた米クリントン政権は、「数値目標」の導入を主張したが、
日本の細川護熙政権は「管理貿易につながる」として徹底してこれを拒否した。
 その結果、1994年2月の日米首脳会談は戦後初めて「決裂」という事態に立ち至った。
 米国はその間も政府調達条項など米通商法にもとづく制裁を発動したが、日本政府は「制裁を背景とした交渉には
応じない」と米国の要求を突っぱねるとともに、特に自動車分野の制裁発動に対してはWTO提訴で応じた。
 今回の交渉では、こうしたかつてのような毅然とした対応はみられなかった。通商政策を転換するのであれば、
安倍政権は国民や国会に対してその理由などを明確に説明する必要がある。

 また、交渉期限にしても、成果が早く欲しいのは米国なのだから日本が主導権を握って協議できるはずだった。
 だが、安倍首相は今年5月のトランプ訪日時にわざわざ「臨時国会での承認を目指す」と確約して周辺を驚かせた。
 首相としては、再選を意識するトランプ大統領を安心させるリップサービスのつもりだったのだろうか。
 案の定、首脳会談後、トランプ大統領が「8月に発表できると思う」と述べて、交渉期限が、事実上、決まってしまった。

 安倍首相は今年1月の施政方針演説で、「私たちは自由貿易の旗を高く掲げなければならない」と強調。また、今回の
合意を受けた記者会見では「自由で公正なルールに基づく世界経済の発展にも貢献できる」と自賛した。
 だが、戦後の通商交渉で歴代の通商交渉担当者が営々と築いてきた原則を無視した交渉を受け入れた政権に、
こんな格好のいいことを言う資格はないはずだ。