新型コロナウイルス感染拡大のあおりで7月24日からの東京五輪・パラリンピックが予定通りに開催できなければ、日本の政局を直撃するのは必至だ。
 延期される場合、開催時期がいつになるかで安倍晋三首相(自民党総裁)の衆院解散戦略が左右される。「ポスト安倍」候補の動きにも影響が出そうだ。
 ◇花道論、幻か
 衆院議員の任期満了は来年10月21日で、新型ウイルスが猛威を振るう前は、衆院解散は東京五輪・パラリンピックが終わる今秋以降が有力視されていた。
首相の党総裁任期も来年9月末までだが、政界では首相が年内にも余力を残して退陣し、岸田文雄政調会長にバトンタッチする「禅譲」論も取り沙汰されていた。
 仮に五輪が1年延期されれば、この「五輪花道論」は幻となりそうだ。「21年五輪」は首相の総裁任期に収まり、自民党閣僚経験者は「安倍氏は21年五輪まで首相を続け、すぐ岸田氏に譲ってそのまま解散だ」と予測した。
 もっとも、こうしたシナリオについて岸田派中堅は「岸田氏としては、きつい。首相になってすぐに総選挙で、解散のフリーハンドがない」と危惧する。
ポスト安倍候補には茂木敏充外相、加藤勝信厚生労働相、河野太郎防衛相、小泉進次郎環境相らの名も挙がるが、
衆院選が直後に控える総裁選では、「選挙の顔」として一般の人気が最も高い石破茂元幹事長が、選挙地盤の弱い若手らの支持を集めるとの見方もある。
 「石破総裁」を阻止するため、首相が「コロナ克服五輪の実現」を掲げて今秋から来年初めに衆院を解散する展開も考えられる。
その場合、来年9月の総裁選直後に衆院議員の任期が満了する政治日程がリセットされ、
石破氏の優位が薄れるためだ。
 ◇禅譲シナリオに暗雲
 2年延期だと状況はさらに複雑になる。首相の現在の総裁任期を越えるからだ。政府関係者は「首相も東京五輪が終わるまでは続けようとする」とみる。
閣僚経験者も「総裁任期は(22年9月まで)1年延長だ。
首相はその前に経済対策を打ち出して衆院解散するだろう」と指摘した
 首相が一定程度経済を立て直し、世論の支持を得るようならば、総裁4選論の流れが加速し、岸田氏への禅譲論が不透明になる可能性もある。
 一方、過去の五輪は中止となったことはあるが、延期となった例はない。首相は、予定通りの時期でなくとも「完全な形で実施」する方針だが、最終決定権は国際オリンピック委員会(IOC)にあり、
日本の事情がどこまで配慮されるかは分からない。
 自民党の鈴木俊一総務会長は2月の講演で、7月に五輪が開催できなかった場合、政権の「政治責任」につながるとの見方を披露。もしも中止となれば経済的な損失は計り知れず、「首相は即退陣だ」(自民中堅)という声もある。