都市博中止を参考にシミュレーション


 実は東京都庁は、新型コロナウイルスの感染が広がってから、五輪が中止される可能性を視野に入れて動き始めていた。 
具体的には、1996年3月に開催予定だった「世界都市博覧会」の中止の事例を参考に、
五輪中止が都にどんな影響を与えるのかを調査し始めており、今も継続中だという。


 世界都市博覧会について簡単に説明すると、この博覧会は、東京テレポートタウンを中心とした東京臨海副都心で1996年に開催され予定だった。
東京都には、博覧会開催を契機に臨海副都心の開発を一気に進めようとの思惑があったが、計画が進行中だった1991年にバブルが崩壊。臨海副都心の開発や企業進出が滞り、都市博の開催が危ぶまれるようになっていた。


 世論も「都市博開催反対」に大きく傾いていた。そんな中で行われた95年の都知事選では、「都市博開催中止」を公約に掲げた青島幸雄氏が勝利を収める。都知事となった青島氏は、公約通りに博覧会の中止を決定したのだった。


 この中止により、すでに発注していた工事の救済や売り出されていた入場券の払戻しなど多額の損失が出ている。結果的には、損失額は開催した際の費用よりも少なくて済んだと言われている。
それでも企業への救済措置などで行った緊急融資はすべてを回収できていない。


 五輪のような大規模な世界的イベントを中止または延期にするとなると、都市博中止の時以上の経済的ダメージが予想される。
五輪の開催都市である東京都は、現在必死になってダメージを軽減する方策を探っているはずだ。もちろんそのダメージは、国全体、ひいてはわれわれ国民にも降りかかってくる。


 消費増税と景気の停滞、そして新型コロナウイルスによる五輪の中止または延期――。この国難に日本、そしてわれわれはどう立ち向かうかうべきなのだろうか。