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 「中国は、その経済力と政治力を使って、イスラム世界を黙らせることに成功した」と、
通称「東トルキスタン民族会議(National Assembly of East Turkestan)」のトップで
ウイグル族支援のキャンペーンを展開するセイット・トゥムトゥルク氏は苦言を呈する。
東トルキスタンとは、ウイグル族のナショナリストらが新疆ウイグル自治区のことを
呼ぶ際の名前だ。

 中国の人権問題を検討するため国連が11月に開いた会合では、批判の声は主に
欧米の民主主義諸国から示され、サウジアラビア、パキスタン、バングラデシュなどの
イスラム諸国は中国政府を褒めたたえた。パキスタンのイムラン・カーン首相は、
1月にテレビインタビューでウイグル族の扱いや収容キャンプについて質問された際、
自国の国境のすぐ先にある新疆ウイグル自治区について「正確な状況」を把握していない
という決まり文句を繰り返した。

 「中国の近隣諸国は、中国からあまりにも多くの資金を得ている」。
新疆ウイグル自治区カシュガル市出身で、2016年にトルコに逃れた不動産仲介業者の
ヤセン・ズノン氏はそう話す。同氏によると、同氏の兄弟姉妹5人は
いずれも同氏が逃亡して以来、その罰として投獄されているという。
「自分たちのために声を上げることはあきらめている。われわれがサウジアラビアや
パキスタンに行けば、捕まえられ、中国に送り返されるだろう」

 トルコが今月抗議を行ったきっかけとなったのは、ある楽曲を理由に収監されていた
有名民謡歌手アブドゥレヒム・ヘイット氏が新疆の収容施設で死亡したという
報道だった。中国はこれを受けて同氏が生存していることを示す動画を公開し、
安全上の理由からトルコ訪問に「慎重」になるよう中国人観光客に警告した。
これは事実上の経済的報復措置だ。

 中国当局は、一連の暴動やテロ攻撃を受けて新疆の地域社会を再構築する取り組みの
一環として、イスラム教の信仰を公に示すことを禁じてきた。男性があごひげを生やす、
女性がヘッドスカーフを着用する、レストランや食料品店がイスラム教の戒律に則った
食品の使用を示すハラル対応の表示を出すなどについてだ。同地区で今も運営されている
少数のイスラム教礼拝堂への出入りは厳しく制限されており、祈りの時間には
外にこん棒を持った警備員の集団が待機している。同地区の道路や都市には、
生体認証を活用した警察の検問所のネットワークが張りめぐらされており、
海外に住むウイグル人はおおむね、地区内に住む家族と連絡が取れない状態にある。