中国のウイグル族迫害、傍観するイスラム世界
中国の投資と支援の引き揚げを恐れ、イスラム諸国政府は非難をためらう
By Yaroslav Trofimov
2019 年 2 月 22 日 12:09 JST 更新

――筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ中東担当コラムニスト

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 中国西部の新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の少数民族ウイグル族と漢民族の間に
多数の死者を出す暴動が起きた2009年、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は
遠回しな言い方はしなかった。同大統領は「中国で起きた事件は、要するに大虐殺だ」と
述べ、トルコの産業相は中国製品のボイコットを国民に呼び掛けた。

 チュルク語系のウイグル語を話すウイグル族の苦境は現在、さらに深刻化している。
中国政府は新疆ウイグル自治区のイスラム文化を一掃し、中国人と同化させることを
目指している。国連の報告者によると、最大100万人ものウイグル族やその他のイスラム
教徒がネットワーク化された「過激思想対策のためのセンター」に収容されており、
さらに200万人が強制的に「政治・文化的再教育キャンプ」に送られているという。

 しかしエルドアン氏は、中国政府が2017年に開始した新疆ウイグル自治区の弾圧に対して、
自ら声を上げてはいない。他のイスラム諸国の指導者もほぼ一様に口をつぐんでいる。
これは、パレスチナ人に対するイスラエルの扱いや、ミャンマーのイスラム系少数民族
ロヒンギャの危機的状況について、イスラム諸国が一貫して非難を続けているのと対照的だ。

 新疆ウイグル自治区での組織的な迫害について、トルコ政府は今月に入ってようやく
「人道的に恥ずべき行為」との反応を示した。この例外的な非難のコメントは、
外務省報道官の声明という形をとっており、エルドアン氏がしばしば行う、
イスラム教の大義に関する世界に向けた感情に訴える発言のような重みはなかった。

 こうした変化の説明は容易だ。「一帯一路」構想による大規模な投資戦略と、拡大し
続ける軍事・技術面の影響力を背景に、中国がイスラム世界、そして全世界においても、
あまりにも中心的役割を果たすようになったため、ウイグル族の大義は重視されなく
なったのだ。米国の外交政策が予測不可能な現状において、イスラム諸国が保険として
中国に接近している状況では、こうした傾向は特に強まらざるを得ない。