進次郎の厚労部会長就任をプロはこう読む
11/12(月) 9:15配信 プレジデントオンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181112-00026635-president-pol

今回のテーマは、厚労部会長に就任した小泉進次郎氏についてだ。父の純一郎氏は厚生大臣に就任したことがあり、私はそれを支えていたが、医療、介護などほんとうに大事な分野である。

進次郎氏の父、小泉純一郎元首相の場合は、大蔵(現・財務)政務次官から財政部会長を経て衆院大蔵常任委員長へと進んだ。
厚生(現・厚労)大臣を三期務めたことや、郵政民営化があまりにも有名で、「大蔵」のイメージは薄いかもしれないが、バリバリの大蔵族である。
大蔵族議員として予算、税制などへの知識を深め、与野党の折衝も多く経験していたことが、他の分野で閣僚になっても、総理大臣になっても、生きていたと思う。
逆に言えば、純一郎元首相が大蔵族議員だったから、郵政民営化も年金改革も実現したのだ。

私は、政治家は得意分野を一つ持つべきだと考えていたので、このまま農林畑でキャリアを積むのも大事なことだと考えていた。

政治家が選挙になると必ず約束する「地方創生」も、その内実を見るとほとんどが農水省の管轄である。
いまや農水族議員は花形なのだ。農水分野だけでは、日本全体を見ることができないわけでは決してない。

今回、進次郎議員は、農水の常任委員長を希望したらよかったのかもしれない。あまり注目されていないが、国会の常任委員長のポストは、実務派閣僚になるための一つのキャリアパスである。
まず、政務官として与党と役所のパイプ役となり、役所内での人脈を構築する。次に与党の部会長として与党と支持者の多様な意見をまとめあげる経験をしたうえで、最後に常任委員長として野党も納得させて法案を成立させるという手順を学ぶ。
「とにかく反対」という野党勢力を抑えて法案や予算を実現して初めて一人前の族議員とみられる。

だから、常任委員長の経験は、大臣への登竜門とみられている。今回の内閣改造で内閣府の女性活躍担当大臣に就任した片山さつき氏も、参議院の外交防衛委員長を務めている。
専門分野を持たない議員は、常任委員長への道のりが遠のき、結果として大臣就任も遅れてしまう。一方で、常任委員長が無事務まれば、どこの役所の大臣も務められるだろう。
こういう一般的なキャリアパスを無視して大臣に抜擢されるケースもあるが、話題づくりだけが目的で官僚に相手にされず、仕事もできずに任期を終えるしかない。

進次郎氏には、官房副長官就任という報道もあったが、これは政界の常識としてありえない。官邸のスタッフである官房副長官や総理補佐官は、自分を殺して任務にあたることが求められる。
官邸の顔である総理以外の政治家が個人の考えを述べてはいけないのである。現在の副長官や補佐官も、「忖度」したとかしないとかで話題にはなっても、実際にどんな仕事をしているかは外には伝わってこない。それで正解なのだ。
進次郎氏のような人気者には向かないポストである。

進次郎氏が日本の将来を担う政治家であることは間違いない。そして、従来の道にとらわれない一歩を、今回の人事で、自ら踏み出したのだ。
私のような古い永田町の常識からすればびっくりするようなことでも、新しいタイプの政策通となって、雑巾がけを忘れずに、国民にとって具体的な成果をあげていけるような政治家になっていってほしいと願っている。

内閣参与(特命担当) 飯島 勲