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〈西野純也・慶応大教授の話〉

 日韓パートナーシップ宣言は、日本が過去の植民地支配を反省し、
韓国が日本の戦後の歩みを高く評価した非常に意義のある外交文書だ。
経済危機に直面した韓国が日本の協力を必要としたこと、もう一つは北朝鮮の
核・ミサイル開発に日米韓の連携強化が必要になったという当時の時代背景が大きい。

 だが、韓国社会はこの宣言後、リベラル政権が続くなかで、
世論が過去の保守政権に厳しい目を向けるようになった。その一つが対日政策だ。
1965年に日本の謝罪をあいまいにしたまま国交正常化したことなどが批判される
ようになった。その矛先は、小泉純一郎首相による靖国参拝など歴史問題の再燃により、
日本に向けられた。日韓で相互批判に拍車がかかり、李明博大統領の竹島上陸が
徹底的に関係を悪化させた。

 済州島の国際観艦式に参加する予定だった海上自衛隊の護衛艦に、
韓国側が旭日(きょくじつ)旗を掲げないよう求めたのは、
「日本は過去を反省していない」という韓国世論の不満を意識したものだ。
しかし、「経済大国」に成長しながら、いまだに日本の過去を批判し続ける姿勢は、
日本国内に嫌韓感情を生んできた。

 一方で、韓流ブームが再び起きるなど文化や経済の交流が拡大しているのも事実だ。
日韓の関係は単純ではなく多面的だ。是々非々で関係を築いていくしかない。
北朝鮮の核問題や中国の台頭などにより東アジアの秩序が大きく変化するなかで、
韓国との協力強化は、今後も優先して進めるべき課題だ。(鈴木拓也)