弁護士への懲戒請求、激増の謎(1) 例年の数十倍 「根底にヘイト」の指摘も
2018/10/2 16:00 ©一般社団法人共同通信社

 弁護士の懲戒処分を、所属する弁護士会に求める「懲戒請求」が2017年、計約13万件に上った。
日弁連の集計で判明した。例年は多くても4千件未満にとどまるため、数十倍の懲戒請求は異例。
なぜ、こんなことが起きたのか。

 実は、13万件の大半は、ほぼ同じ内容だ。各地の弁護士会が朝鮮学校について出した声明を批判し、
文面も似通っている。この声明に反発するブログが懲戒請求を呼び掛けており、
それに応じた人々が出したとみられている。

 届いた請求は13万件だけではない。他に800人以上から、各地の弁護士会に所属する弁護士全員の
懲戒請求を求める書類も届いており、全部で数千万件に上るともみられている。正確な数が不明なのは、
日弁連が「懲戒制度の趣旨と異なる」として、この種の請求を取り扱わない方針を示し、集計しなかったためだ。

 懲戒制度は弁護士個人の行為の是非が想定されている。
今回は、弁護士会の声明を巡って弁護士個人の懲戒を求めているため、日弁連は取り扱わないことを決めた。

 【弁護士の懲戒請求】
 弁護士は、品位を失う行為などがあると、除名や戒告などの懲戒を受ける。請求は誰でも可能。
弁護士会が調査するため、請求されただけで弁護士にも弁護士会にも負担となる。

 ただ、今回の問題の本質は、懲戒対象となるかどうかではない。
ある弁護士は、こう指摘している。「根底に朝鮮学校への差別、ヘイトがあることが問題だ」。どういうことか。

 問題の発端は、朝鮮学校への補助金停止に反対する声明を、日弁連や東京、大阪両弁護士会などが
16年に出したことだ。これに対し、「余命三年時事日記」と題するブログが
17年6月ごろから21の弁護士会の弁護士名を掲載し、懲戒請求するよう呼び掛けた。

 趣旨は「違法な朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同する行為は、確信的犯罪行為」のため、
懲戒を請求するとの内容。「国連が(北朝鮮に)制裁決議をしている現状で、
補助金支給を要求する団体はまさにテロリスト支援組織」との記述もあった。(続く)