https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36411000S8A011C1EN2000/
トランプ流に株価下落の警告(大機小機)
2018/10/12 16:37

トランプ米大統領が国連総会演説で「歴代政権より多くのことをなし遂げた」と自慢し、
各国代表の失笑を買ったのは9月25日。それから半月で起こった10日の米国の株価急落
は、トランプ流の政策に対するマーケットからの警告だった。
トランプ氏の特徴は、何事についてもアクセルを踏みたがることだ。どういうリアクシ
ョンが起き、どんな副作用を伴うか、政策は持続可能かについて、包括的に深く考えて
いるようにはみえない。外交政策も経済政策も同様である。

米国の4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、前期比年率で4.2%に達した。9月
の失業率は3.7%と48年ぶりの低い水準だった。そのたびにトランプ氏は、経済運営を自
画自賛してきた。
トランプ政権による大規模な減税と財政刺激策は、確かに好況の支えになっている。た
だし、米国では、オバマ前政権当時から先進国の中で最も堅調な景気が続いていた。そ
こに大規模減税など不況期のような刺激策を加えたのだから、景気指標がさらに良くな
ったのは当然である。

問題は、インフレや財政赤字拡大を抑制するブレーキの必要性が、トランプ氏の発想か
ら抜け落ちていることだ。景気の過熱を防ぐブレーキ機能は、米連邦準備理事会(FRB)
に委ねられた形である。ところが、株価下落に直面したトランプ氏は、FRBの進める利
上げには同意しないと主張し「FRBはクレージーだ」と繰り返し語った。

政権が中央銀行の金融政策に露骨な不満を示し、利上げを止めようとすれば、市場の不
信を招く。
株価急落の引き金は米国の長期金利上昇だが、その背景にあるのは財政赤字の拡大と国
債の増発だ。これは、政権の政策に起因するというべきだろう。
11月の中間選挙を前にトランプ氏は、イラン制裁復活の副作用である原油高やガソリン
価格上昇の責任を、石油輸出国機構(OPEC)に転嫁しようとしている。