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日ロの平和条約、いま必要か
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO38632850W8A201C1TCR000/

 領土交渉をいま妥結させるということは事実上、4島返還をあきらめるのに近い。

 だからといって、4島返還に固執すべきだと言いたいわけではない。もし、平和条約の締結がもたらす国益が、
4島面積の約9割よりも大きいのであれば、あり得る選択肢だ。このまま4島返還を訴えても、近い将来、ロシアが
応じる兆しはないからだ。
 逆に、平和条約を結んでも、失う領土に見合うほどの外交利益を得られないのであれば、不利な条件をのんでまで、
手打ちを急ぐ必要はないだろう。
 いったい、どちらが正解なのか。日ロ双方への取材を重ねると、残念ながら現実は後者に近いように思う。
 そもそも平和条約がなくても、日ロはそれなりに「普通の関係」になっている。56年宣言で外交関係は正常化した。
安倍首相とプーチン大統領の会談は通算24回を数え、防衛交流も進んでいる。
 そのうえで平和条約を結ぶと、外交上、いったい何を得られるのか。日本政府関係者らによると、安倍政権が期待
しているのは、主に2つだ。
 第1は、中国をにらんだ戦略協力である。ロシアは内心、強大になる中国を脅威に感じている。領土問題がなくなれば、
日ロは外交、安全保障面でさらに連携を深め、中国に向き合いやすくなるというわけだ。  趣旨は分かるが、日ロの外交・
安保協力はかなり進んでおり、平和条約によって「どこまで上積みできるのかは疑問だ」(日本政府筋)。両国は外務・
防衛担当閣僚協議(2プラス2)を3回開き、軍首脳の往来も増えている。
 しかもロシアからみれば経済、外交ともに、日本より中国のほうが大切だ。この問題に詳しいロシアの外交専門家は
こう話す。
 「強大になる中国は将来、脅威になるかもしれないが、現在は緊密な戦略パートナーだ。ロシアは日本ほどには、
中国をけん制する必要性は感じていないし、平和条約を急ぐ理由もない」
(続く)