AI研究の重鎮が語る、AI社会での人間の価値
2018年05月21日
https://newswitch.jp/p/13010

産業技術総合研究所の辻井潤一人工知能研究センター長は20日、都内で開催された講演会で、
「人間と人工知能(AI)は協働する必要がある。価値観や目標の設定、広い文脈の理解や文脈の変化への対応ができるのが人間だ」と語った。

ソニーコンピュータサイエンス研究所(東京都品川区)の北野宏明社長は、
米国と中国がAIの覇権を争う現状を受け、「日本が勝ち戦に持ちこむには、自動車や製造業などの実世界技術からAIに入るしかない」と警鐘を鳴らした。
動きが遅れれば、メーカーは要求通りに安くて良いもの作るだけの負けパターンに陥る。

メディアアーティストの落合氏は、「最終ユーザーが自分で簡単にAIをプログラミングできることが、多様な社会には重要だ」と語った。

 講演後、辻井研究センター長にAIの社会実装について見解を聞いた。

- AIの社会実装はどんな分野で、どんなスピードで進むのでしょうか。

「私個人の考えとして話すが、AIが実装される分野は多岐に渡り、スピードは速い。製造業も今は動きが鈍いが、『AIを導入したい』という多くの声を聞く。
日本の競争力のためにもやらなければならない。シミュレーションなどの周辺技術が整ってきた」

- 医療分野での利用が期待されています。

「医療費を下げながら質を上げるには、AIを使うしかない。予防医学の領域は、病気でない段階で可能性を見つけるため、膨大な検査データを扱う。
今のAIは画像処理が強く、豊富なデータがあれば、人間より高度なことができる。個別の仕事に最適化されたAIは、かなり早く入るだろう」

- AIと協働するために、人間はどんなマインドセットの変化が必要でしょうか。

「大量生産の成功を支えたのは、それぞれが割り当てられた仕事をする分業社会だった。だが、固定化された仕事は、個別の仕事に特化したAIで置き換えられる可能性がある。
一方、型にとらわれず、変化に柔軟に対応するのは、人間にしかできない。流動的な、組織にとらわれない人材が求められるのではないか」