TPPや経済支援の意外な共通項…「比較優位の原理」
ホンモノの教養大辞典
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO83551210T20C15A2000000

■絶対劣位でも比較優位があればいい

しかしリカードは、それぞれの国が相対的に優位なもの(比較優位)に特化すれば、労働量は同じでも、結果として、
服とワインの総生産高がそれぞれ増加すると主張しました。特化することで労働生産性が上がるので生産量が増え、
それだけ消費できる財が増えるわけです。つまり貿易すれば、両国ともさらなる利益が得られます。

整理すると、B国はA国に対して絶対優位な産業がなくても(絶対劣位であっても)、B国がワインよりも服の生産が得意なら、
B国は比較優位の服の生産に特化すればいい(A国に対して優位なものがなくてもいいのがポイント)。そうすれば、
A国のワインとB国の服を合わせた生産量は、それぞれが国内でワインと服を生産する場合に比べて増える、
という驚くべき原理です(それぞれの国で不足するワインや服は、貿易で相手の国から得ることになります)。

それぞれが、相手に比べて圧倒的に優位な産業をもつ国同士(双方が絶対優位の状態)で貿易すれば、
効率が上がって生産量が増えることは容易に理解できますが、他国に対して絶対劣位な産業しかなくても、
比較的得意な産業に特化して貿易すれば豊かになるという「比較優位の原理」は、私たちの固定観念を覆す目からウロコの経済理論です。

※本日のポイント

「比較優位」と「絶対優位」を混乱しがちというのは、例えば「他国と比べて1、2を争える強い産業を持たねばならない」という主張は「絶対優位」の発想であり、
リカードの言う「比較優位」と勘違いしてしまう人もいるという意味でした。