難民寛容メルケル政権に試練=社会分断の危機−ドイツ
2016年07月23日 16:49 発信地:ドイツ

【7月23日 時事通信社】ドイツ南部ミュンヘンで起きた銃乱射事件の容疑者が
イラン系の男だったことで、独国内で移民や難民に対する風当たりが強まるとの
見方が出ている。昨年以降、中東などから難民らが殺到しており、
一部国民の反移民・難民感情が悪化する懸念も強い。
難民寛容政策を取ってきたメルケル政権は、
「開かれた国」の是非をめぐり社会が分断する危機に直面、試練を迎えている。

欧州最大の難民受け入れ国ドイツには昨年、中東などの難民ら100万人以上が
流入した。昨年11月のパリ同時テロを受け、難民に紛れてテロリストが潜入するとの
懸念が高まり、メルケル政権が苦慮した経緯がある。

当局によれば、建物の破壊など難民施設が被害を受けるケースは昨年900件を超え、
前年の5倍以上に達した。反難民政策を掲げる新興政党「ドイツのための選択肢」は
10%前後の支持率を確保しており、難民に対する国民の不満の受け皿として
基盤を固めた感がある。

今月18日に南部ビュルツブルク近くで起きた列車乗客襲撃事件は、
アフガニスタン出身とみられる容疑者(17)が引き起こした。
わずか数日でイラン系の男(18)による凶行が続いたことは
国民心理への悪影響を増幅する可能性が大きい。

難民や移民の中でも若年層が過激思想や暴力に向かう傾向があることはこれまでも
指摘されてきた。報道によれば、昨年9月以降、難民用施設やモスク(イスラム礼拝所)
で過激派メンバーが難民らに接触を試みたケースが約320件あったが、
当局は特に未成年者が勧誘になびきやすいとみて警戒していた。

一方、独政府は「難民や移民とテロは直接は結び付かない」と事あるごとに強調。
難民らに対する反発の沈静化に躍起となってきたが、
今回の事件で政府の主張に国民から疑問を突き付けられる事態も考えられる。

http://www.afpbb.com/articles/-/3095018