ファイアーマンが怪獣と戦う確率もゼロではない_____________

しかし、もし自らの子々孫々の暮らしや日本という国家の存続を少しでも考えるのであるならば、巨大カルデラ噴火の危険値(=想定被害者数×発生確率)が交通事故のそれと同程度であることを認識しておくべきである
(「日本喪失を防げるか? ギャンブルの還元率から巨大カルデラ噴火を考える」)。
火山の息遣いやマグマの動きに注目するマグマ学者としては、この高揚感に一抹の懸念がある。それは、今回の判断が「原発反対」の
道具だけに使われはしないかということだ。もちろん私は原発賛成派には属さない。そもそも世界一の地震大国、
火山大国に原発はふさわしくないと感じる。私の危惧は、感情的原発反対論者の
多くが、巨大噴火で原発が破壊された場合の危険性のみに注目していることである。冷静に考えていただきたい。
巨大カルデラ噴火が一度起きて原発が火砕流で被害を受けるような場合には、その領域に暮らす人々の日常生活はすでに高温の火砕流によって破壊されているだろう。
そればかりではない、数十キロメートルの高さまで立ち上がった巨大噴煙柱から偏西風に乗って運ばれる火山灰は、
日本列島の大部分を覆い尽くしてしまう可能性が高く、その場合は列島の大部分で
ライフラインがストップする(「最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火」)。今回の伊方原発問題で
想定された阿蘇山巨大カルデラ噴火が起きると、広島には恐らく火砕流は到達しないであろうがほぼ
確実に1メートルもの厚さの火山灰に街は埋没し、人々の日常はほぼ完全に崩壊すると予想される。
 巨大カルデラ噴火の危険性を根拠に原発再稼働に反対すること自体は正当で
あると思うが、それ以前に(少なくとも同時に)巨大カルデラ噴火そのものの
試練に対する覚悟を持つべきであろう。もちろん、覚悟は諦念ではない。いかにこの火山大国で暮らしていくかを考えることこそ覚悟である。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tatsumiyoshiyuki/20171215-00079280/