例えば、労働意欲のある人が100人いる経済を考えます。現在、そのうちの90人が雇用され、
10人が失業しているとします。分かり易く言えば、90席ある劇場が満席で、外に10人が並んで
待っているイメージです。現在の失業率は「10/(90+10)」ですから、10%になります。
生産年齢の減少とは、この例で言えば、席に座っていた人が外へ出ていき、再度並ぶことはないということです。
今、5人が出ていくとします。すると外の5人が席につく。並んでいる人は残り5人となります。
このときの失業率は「5/(90+5)」ですから、約5.2%へ低下します。そうした状況が継続するのです。

経済成長による失業率の低下とは、ここでは劇場の席が増えることです。すなわち働き手が増えて
生産量が増加することです。例えば、90席が95席になれば、失業率は「5/(95+5)」ですから、
5%になります。これが通常考えられている景気拡大と失業率低下のプロセスです。しかし、今見たように、
労働市場の需給ひっ迫が必ずしも景気拡大(生産増)を伴うものではない場合には、実質賃金への
上昇圧力は弱いでしょう。

さらに、退職者を短時間労働者に置き換える場合も、同じく失業率は低下します。先の例で言えば、
8時間労働者1人が出て行った席に、短時間労働者2人が座るとすれば、失業率が低下するのは明らかでしょう。
実際、先の毎月勤労統計調査を見ても、平成27年から常用雇用者は前年比で増えていますが、
総実労働時間は逆に前年比で減少している月が多くみられます。それは短時間労働者への代替が
進んでいることの証左です。以上より、日本固有の構造問題である生産年齢人口の減少が、
失業率低下と実質賃金の低迷という状況を両立させていると考えられるのです。


こっちにも
とりあえず今のところ一番スッキリ説明できてる