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万景峰号が入港中止

北朝鮮 厳戒態勢理由に
新潟港に九日入港予定だった朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が北朝鮮・元山港からの出航を取りやめたことが分かった。
北朝鮮側は、日本が前例のない厳戒態勢を敷いたのが理由とし「不当な策動」と日本政府を非難。今後の日朝関係に影響を与えそうだ。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の南昇祐副議長は八日、東京都内の中央本部で記者会見し「日本の当局は非友好的な措置をあらためるべきだ」と当面運航を見合わせる意向を示した。
運航再開は未定という。
政府関係者は(1)安全検査が強化された(2)入港が日本国内で大きな騒ぎとなった−ことが取りやめの理由との見方を示した。政府は運航が再開された場合でも厳格な検査を実施する方針。
拉致被害者の家族らは九日朝、新潟港で運航再開反対と北朝鮮への経済制裁を訴えた。
万景峰は一月の入港以来約五カ月ぶりに九日午前、新潟港に入る予定で、六月二十三日の次回入港以降、九月までに計九回の運航を計画していた。
国土交通省は船舶の安全性を検査する「ポートステートコントロール」(PSC)を十年ぶりに実施する方針で、安全基準を満たしていないとして航行停止命令を出す可能性があった。
船長から八日午後零時半ごろ「出航せず」の電報が船舶代理店に届き、朝鮮総連は乗船を予定していた朝鮮大学校の学生や祖国訪問団の約二百五十人に運航見合わせを伝えた。

万景峰をめぐっては、北朝鮮の元技師が米議会で「ミサイル部品の90%は万景峰を通じて運ばれていた」と証言。対韓国工作活動の舞台になった疑いもあり、

国交省、海上保安庁、東京入国管理局、東京税関などが過去最大の約三百七十人で立ち入り検査を予定。
警察当局も機動隊員ら約千五百人を動員し右翼の抗議行動に備えていた。
◆ポートステートコントロール(PSC) 海上人命安全条約などの国際条約に基づき、安全航行や海洋環境保護の観点から外国船舶に対して寄港国が行う検査。
外国船舶監督官が船内に立ち入り、船体の構造や設備に問題がないか調べ、海図や各種証書、救命ボートを備えているかチェックする。主に新造船や老朽船が対象とされる。
欠陥が発見された場合には、修理など是正を命じることができ、是正されない場合は出港を差し止めることもできる。 (2003年6月9日)