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「才羽さんって、イラストレーターのMiDoRiの妹さんなんだって!?」

「あはは…。実は私が姉なんです」

才羽モモイはミレニアムを卒業後、都内のデバッグ会社でアルバイトをしていた。

妹のミドリは若くして絵の才能を開花させ、新作ゲームのキャラクターデザインや人気ラノベのコミカライズなどを手掛ける売れっ子作家となっていた。

妹があんなに頑張っているんだ、自分も大好きなゲームで成功したい―――そんな思いを胸に、彼女はプロゲーマーを目指しストイックな日々を送っていた。

しかし好きであるだけではプロテストの門は狭く、落選するのは今年で10度目であった。

「モモイちゃんは…その…ゲームをするのが好きなら…デバッガーとかが向いてると思う」

かつての学友、花岡ユズ。学生時代の制作実績が買われ、現在は大手ゲーム会社のディレクターとして多忙な日々を邁進している。モモイは、そんな彼女の紹介で現職に就いているのであった。

デバッグの仕事は彼女に向いていた。地味な作業の連続ではあったが、ゲームの周回プレイを厭わず、かつては「クソゲー」すらも愛した彼女にとっては、つまらないバグも愛おしく感じられた。

「いつかまた、みんなでゲーム作りたいなあ…」

そしてモモイは今日も、新作『ブルーアーカイブ』のデバッグに励む―――