これも懐い

胡桃は昔から少し不器用で、それが理由かは知らないが、胡桃が作る料理はお世辞にも華やかとは言えないほど質素で見映えの悪い物ばかりだった。

俺との初デートの日、胡桃が嬉しそうに「今日は鐘離先生の大好きな目玉焼き入れといたよ」と俺に言ってきた。

俺は生返事で弁当の中身を確認した。

すると確かに目玉焼きが入っていたが形もめちゃくちゃだし、彩りも悪いし、とても食べられなかった。

弁当を見た俺に胡桃は「どう?どう?」としつこく尋ねてきた。

俺は弁当の出来映えにイライラしていたし、いつもの胡桃の態度に対する鬱憤も溜っていたので「うるさい!こんな汚い弁当岩喰いの刑だ!もう2度と作るんじゃない」とついきつく言ってその場に弁当をぶちまけてしまった。

胡桃は泣きそうな笑顔で「あはは、そうだよねー、料理下手でごめんねー!」と言いそれから弁当を作らなくなった。

俺にはなぜ胡桃があのとき泣きそうな顔をしたのかいまだにわからない、まぁ胡桃が訳のわからない言動をするのはいつものことなのできにしないでおこう。