>>516

店主は金貨が入った袋を取り出して金貨を棚の上に並べ始める。一枚、一枚ゆっくりと。

 「宗室くん……彼は一体何をしているんだろう」
 「金貨を用意しているのは分かるが……これは」

 私は思わず頭を抱えたくなるのをぐっと抑えて店主の行動を見る。
 彼は数えているのだ、金貨を一枚、一枚丁寧に。それはありがたい事ではあるが非効率だ。

 「すまない。少し手伝わせて貰うよ」

 袋に手を突っ込んで十枚の金貨を取り出す。それを棚の上に積み上げた。
 そしてその行為を十回繰り返す。これで十枚の金貨が十セット出来て百枚の金貨が揃った。

 「んあ、これで百枚になったって言うのかよ?」
 「ああ、数えてくれても構わない」
 「どれどれ…………本当だ百枚になってやがる!!」

 偉く驚いた様子で歓喜の声を上げる店主。
私はそんな彼の事などどうでも良いので金貨を受け取って立ち去ろうと思ったのだが。

 「アンタ何者だ! こんな革命的発想を思い付くなんて只者じゃねえな?」

 後ろから店主に呼び止められる。仕方がないので私は一度、去ろうとした歩みを止めて後ろを振り返り。

 「私の名前は島井宗室。君と同じくして、一流の商人を目指すものさ」