桃娘(トウニャン)と呼ばれる少女たちをあなたは知っているだろうか。
 一説によるとその歴史は中国が秦と呼ばれていた頃から存在するとも、はたまた近代の創作であるともいわれ、あるいは現代にまで密かに存続しているとも言われている。
 彼女たちは一種の性奴隷であり、売春婦である。
 ただ桃娘が普通の性奴隷と違うのは、赤ん坊の頃から桃のみを糧として与えられるという(異常とも言えるほど)徹底した食事管理をなされている事だろう。
 そうして育てられた桃娘の体臭はおろか汗に至るまで桃の香りがし、偏った食生活により糖尿病となってしまった少女の尿は甘くフルーティなのだという。
 世の金持ちはその尿や汗を回春の妙薬や珍味とし、好んで飲むらしい。
 そしてもちろん、性奴隷と言うからには男の夜の相手もする。
 しかし桃娘の初体験は、同時に最後の性交渉ともなることもしばしばだった。
 理由は単純明快。桃のみの食事で育った少女の身体が、セックスの激しさに耐え切れないからだ。
 桃娘の儚さはそれのみにあらず。人為的に糖尿病とされた桃娘のほとんどは、成人を迎える前に哀れな死を迎える。あるものは失明し、あるものは四肢を腐らせ、そしてまたあるものは――殺され、その肉を人に食われる。