夜、ちとせさんと二人。

列車を降りると、その駅の周りでは、
イルミネーションイベントの真っ最中だった。
この街では、クリスマスの頃だけでなく、
冬の間ずっと、街じゅうをイルミネーションで飾っているらしい。

「街がキラキラしていて、とても素敵ですね…」
そうだね。街路樹も、お店も、みんなキラキラしてる。
「いろんな形の光がありますね。動物とか、乗り物とか…
 ……あっ、マスター! あれ…!」

ちとせさんが指差す方を見ると、
ピンク色の、ハート型のイルミネーションがある。
そばの建物の、壁全体を使っているみたいだ。とても大きい。
二人で思わず、言葉を失って見つめてしまう。

…しばらくすると、ちとせさんは突然、
ハート型のほうへと駆け出していった。
どうしたの? と、慌てて追いかける。

やがて、ちとせさんは、ハート型のすぐ目の前に着いた。
そして、後から追いかけてきた僕のほうを振り向く。

http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org504056.jpg
「わたくしの、マスターへの気持ちは、
 これよりも、もっと、ずっと大きいんですよ?」