>>317
この戦力差でなお実行しちゃうのがね……

 こうして、300の手勢で5000の魔物軍を迎え撃ったシリルカの街攻防戦は終結を迎えた。

 味方の被害は数えるほどに収まり、圧倒的劣勢ながらも魔物に致命的な打撃を与えた戦いは、大侵攻の全史を鳥瞰ちょうかんしても、この戦いが初のことだった。

 これが、のちに史上有名な戦いとなる、シリルカの会戦だ。

 この戦いでルークが採用した戦術・包囲殲滅陣ほういせんめつじんは、対大侵攻用の最も効果的な戦型として、後世まで高く評価・研究されることになった。

 ルークはこれまでにも迷宮の攻略で才覚の片鱗へんりんを見せていたが。
 時代を越える才能が、ここに誕生した。 


 ◇ ◆


 そして、この戦いで。
 1人の若者が、初めてルークの戦術の技巧ぎこうにふれることになった。

「すげえ……。魔物との戦いで、こんな戦術を敷しくヤツがいるのか……」

 彼はエジンバラ皇国に遊学中で、好奇心旺盛な性格と物珍しさから、自ら進んで会戦に志願した変わり者の青年だった。

「そうか……。敵両翼の戦力が薄いことを逆手にとって、中央はハナから捨てて挑んだんだな。これが選択と集中か」

 彼の名は、スペイツ・フォン・ウェルリア。

 ウェルリア王国が正当後継者は1人。
 誉ほまれ高き選良せんりょう、第一王子である。

 ルークの才能を目の当たりにしたスペイツは以後、ルークに付き従う一兵卒のように、彼の戦場を追い続ける。
 スペイツがルークと並び立つ将に育つまでには、もう少し時間を待たなくてはならなかったが。