仕事の後、疲れ切った主人公が一人用のソファにドカッと座った所を見計らい、その膝にストンと乗り込むイナリ。

「よく頑張るなぁおんし」

労いの言葉をかけるその目からは、なんというか、呆れたような、寂しいような、そんな感情が見て取れた。

「たまには休めよ、それも仕事の内だぞ」

前を向き、主人公を背もたれに体重をかけてくる。といっても彼は軽く、圧迫感が腹部と胸部に程よくかかり、漏れた吐息と共に少しだけ、疲れも抜けた気がした。

イナリの耳が、頬を撫でる。

背中を通し、心音が伝わる。

四肢が重く感じ、瞼が下がる。

「おんし」

静かな部屋の中で、イナリの声だけが鼓膜に触れる。

「頼りにしているよ」

こちらこそ。